まことくんちの甘えんぼうねこの名前は『まんじゅう』と言います。
公園で拾った時に、とてもちいさくて、ちいさくて、丸まった姿がまるでおまんじゅうのように見えたから、そのまま名前も『まんじゅう』になってしまいました。
拾ってくれたまことくんと、まことくんのボーイフレンドのかずやくんと赤いおさしみと、良いこ良いこが大好きな甘えんぼうのこねこです。
まんじゅうは、公園のアジサイの下で生まれました。
おとうさんはお金持ちの家のハンサムねこで、おかあさんは公園生まれ公園育ちの美人ねこです。みぶんちがいの恋でしたが、2ひきはとてもあいしあっていました。おとうさんねこは2かいの屋根から飛び下りて、おかあさんのところへと走っていって、結ばれました。でも、2ひきが結ばれたのもつかのまで、おとうさんねこの御主人様がおひっこしをすることとなり、2ひきの間には、2000キロもの距離が出来てまったのでした。
人間のように、ぱそこんやけーたいでメールをおくったり、でんわでおはなししたりすることはできません。忘れないでいることだけがおかあさんねこに出来るあいのかたちでした。
自然の中は、きけんがいっぱいです。
公園の中の池はたいせつなお水飲み場ですが、こねこが溺れてしまうきけんがありました。
道路は交通事故のきけんがありました。まんじゅうのおにいさんとおねえさんはくるまにひかれて、みじかい命を終えました。
ほけんじょに連れていかれるきけんがありました。
いぬにちょっかい出されるきけんがありました。
人間にいじめられるきけんもありました。
からすにつつかれるきけんがありました。
びょうきのきけんがありました。
ごはんが食べられないきょうふがありました。
こねこはいつもおなかを空かせてないていました。
おかあさんは、がんばってがんばってがんばって、おんな手ひとつでこねこを育てました。最初6ぴきいたこねこは、3しゅうかんで3びきにまで減ってしまいましたが、それでもきびしい自然の中では、すごいことです。おかあさんねこは、とてもりっぱなお母さんでした。
さいしょの試練をのりこえて、ようやくおっぱいから他のものを食べられるようになったころ、また1ぴきがしにました。ねこ社会で今とてもしんこくな病気にかかってしまったのです。
1ぴきは、運良くおんなのひとに拾われました。
そして、公園には、おかあさんねことまんじゅうが2ひきだけ残りました。
アジサイの下が2ひきのおうちです。
『生きていることがしあわせだから。もしもおまえ1ぴきになっても、がんばって1日でもながく生きるんだよ』
『だいじょうぶだニャー』
まんじゅうはおかあさんがいるから、なにも心配なことはありませんでした。
まんじゅうは、ぶきようなねこです。
ねずみもおさかなもとれません。ごみばこあさりもあんまり上手にできません。まだまだ1ぴきではちゃんとごはんを確保することができませんでした。
まんじゅうはちいさくて力のよわいねこでした。
からすにとっては格好のエサです。
電線にとまって、まんじゅうをながめては、カアカア鳴いて狙っていました。
まんじゅうは、何度もからすに食べられそうになりました。
背中には、からすにつつかれたり、毛をむしられあとが一杯ついていました。
それでも、まんじゅうはいつもニコニコしていて、ごきげんで、しあわせでした。
アジサイの下で、おかあさんとくっついて、大きな『毛マリモ』みたいになりながら、きょうだいの話やおとうさんねこの話を聞いたりしていました。
『おとうさんは、どうしてここにいないの?』
まんじゅうが聞くと、おかあさんねこは少し寂しそうに言いました。
『遠くに引っ越してしまったから、もう会えないのよ。生きているのか死んでいるのかもおかあさんにも分からないわ』
『たしかめに行けば良いニャッ』
『ここから2000キロもはなれているのよ。ねこの足では行けないの』
『にせんきろ?』
『錦鯉4,000,000ぴき並べた距離と同じくらい遠いのよ』
『…………うまそうだニャア』
『………………そうね』
『おかーさん、僕がいつかおとーさんのところに連れていってあげるよ』
『…………ありがとう』
『おみやげ持ってってあげようね』
『……そうね』
『にぼし持ってこーねっ』
『…そうね』
『…どうしておかーさん泣いてるの?』
『……嬉しいからよ』
『おかーさん、嬉しい時は泣くんじゃなくて、笑うんだよ』
『……そうね…そうね…』
まんじゅうは、ぽろぽろと涙を流しているおかあさんねこの涙をなめてあげました。おかあさんねこは、からすにつつかれてボソボソの、まんじゅうの背中をなめてあげました。2ひきはぴったりとくっついて眠りにつきました。
2ひきしかいませんでしたが、2ひきなりにしあわせでした。
おとうさんねこのところに行く話をした、次の次の日のことでした。
公園の前の道路のむこうに、アメリカンショートヘアーの毛並みのとても美しいオスネコがスタスタと歩いているのをおかあさんねこは目にしたのです。
『………あなたっっ!!』
しっかりもので、頭の良いおかあさんねこらしからぬ行動でした。
良く見れば全然違うねこだったのに、あの独特の毛の模様に、おとうさんねこと見間違えてしまったのです。
『あなたっっ!!!』
それは、一瞬の、出来事でした。
そして、まんじゅうは、たった1ぴきになってしまったのでした。
アジサイの下でおかあさんの帰りを何日も待ちました。
池のお水を飲みながら、いっしょうけんめい空腹をがまんしました。
大きな声で、
『おかーさーん』
と、呼んでみました。
おかあさんは、何日待っても帰っては来ませんでした。
「かずやくん」
「ん?」
「……おまんじゅうが落ちてる…」
「まんじゅう?」
ある晴れた日のことでした。
まことくんは、かずやくんにデートにさそわれて、プラネタリウムを見た帰り道、少し遠回りして公園までやってきました。
ろまんちっくな天体ショーを見たばかりなので、かずやくんと手を繋ぎたくて、人気のない公園にまでやってきたのです。出来れば、おとなのキスとかも出来たら良いな、なんて思っていました。
その公園の入り口に、茶色の小さなまんまるいものが道路の上にぽそっ…と、あったのです。あんまり小さく丸まっているので、まことくんは、本当におまんじゅうが落ちているのかと思ってしまったのです。
「ほら、あそこの…入り口の所。茶色のまんじゅうが落ちてる」
「まこと、アレまんじゅうじゃないよ。いくらなんでもあんな大きなまんじゅう、オレ見たことないもん」
「…じゃ、なんだろう?」
「行ってみようよっ」
かずやくんは、まことくんの手を取って走り出しました。
「か、かずやくんっっ」
まことくんは、いきなり大好きなかずやくんに手を握られて、びっくりするやらうれしいやら、はずかしいやらで、顔が真っ赤になってしまいました。
茶色のまんじゅうにみえたものの側まで走っていくと、それが小さなこねこだったことが分かりました。
「ねこだよ。しかもこねこだ」
かずやくんは言いました。
「うん」
まことくんのてのひらに乗りそうなくらい小さなこねこでした。
かずやくんが、まことくんの手を握っていた手をギュッ、と、強く握ってから、
「ちょっとゴメン」
と、言って手を放しました。それからしゃがんでこねこの頭を優しく撫でました。
「どうした?おとうさんとおかあさんは?」
「……ニャー……」
掠れた声でこねこは返事をしました。
「ん?すごい声だな。お腹空いてンのか?」
「……ァー……」
「よしよし」
かずやくんは。こわれものを扱うように、そっとこねこを拾い上げました。
それからまことくんの方をむいて言いました。
「まこと、ゴメン。オレ、コンビニ行ってなんかコイツが食べれそうなもん買ってくる。ここで、待ってて」
「う、うん」
まことくんはかずやくんの勢いに押されてつい頷いてしまいました。
「直ぐ戻ってくるからっ」
そう言って、まるでリレーのアンカーみたいにものすごい早さで坂道を走って行きました。
かずやくんはスポーツ万能の男の子です。
サッカークラブのえーすすとらいかーで、足がとても速いです。
頭も良くて、成績はいつもクラスで1番か2番です。
いつも外で運動しているから、夏なんかはクラスで誰よりも1番日焼けしています。
女の子からばれんたいんでーにちょこれーととかもらったり、告白されたりするけれど、
「ゴメン。オレ、まことが1番好きだから」
って、ちゃんと言って断ります。
まことくんは、優しくて、頭が良くって、スポーツ万能のかずやくんが大好きです。
だからかずやくんから
「好きです」
って、言われた時は、うれしくて、
「ぼくもです」
って、言ってしまいました。
それから2人は付き合っています。
デートも何回もしました。
手も繋いでるし、ちょっとならキスもしちゃいます。
将来結婚しようねって、固い誓いも立てました。
かずやくんなら、きっと幸せにしてくれるだろうなと、まことくんは思っています。
まことくんは、こねこのためにコンビニに走っていくかずやくんはなんて優しいんだろうと思いました。そんな優しい人の恋人なんだって思ったら、とても嬉しくなりました。
「…にゃー……」
手の中でこねこが鳴いています。
本当に小さなねこです。ガリガリで、背中なんかは皮が余っていました。触ると直接背骨のボコボコが指に触りました。
「……大丈夫?」
声をかけるとこねこはまことくんの顔を見上げました。
「………大丈夫?」
じーっと、まっくろの瞳がまことくんを見詰めます。
「………今、かずやくんが美味しいもの買ってくるから」
「…………アー」
「……大丈夫だよ」
「…ニャー…」
こねこはまことくんの手の中でじーっとしていました。
まことくんは自分のてのひらに、こねこの体温が流れ込んでくるのを感じました。
こねこもまことくんのてのひらの暖かさが伝わってくるのを感じました。
まことくんにとっては初めの感触でした。
こねこにとっては、久し振りの…おかあさんねこがいなくなって以来の温もりでした。
こねこはその暖かいまことくんのてのひらに安心したのか目を閉じて小さな溜め息をつきました。
こねこが目を閉じてしまったのでまことくんは少し焦ってしまいました。
しんでしまうかと思ったからです。
でも、しばらくしたらこねこが規則正しい寝息を立て始めたのでホッとしました。
「………あったかいなー……」
まるで湯たんぽみたいでした。
しばらくしてかずやくんがコンビニから帰ってきました。
お腹から牛乳と缶詰めエサを取り出して、
「少しあっためてみたんだけど、これで良いかなぁ?」
と、言いながらこねこのためにごはんの用意をしました。
「まこと、ゴメンな。折角のデートなのに1人にさせて」
「んーん。やさしいかずやくん大好きだよ」
「…へへっ…」
こねこのごはんの用意をするために下をむいていたかずやくん、耳が少し赤くなりました。
「さ、出来た。あれ?寝てるの?」
「うん。でも、大丈夫。起こすよ。……ほら、……まんじゅう、ごはんだよ」
「まんじゅう?」
「だって、ほら、名前がないとこまるじゃん?」
そういうまことくんの顔を見て、かずやくんも笑いました。
「まんじゅうか…ははっ。それ、良いな。ほれ、まんじゅう。まんじゅう、良かったな。お前名前まんじゅうだってさ。まことがつけてくれだんだぞ。ほら、まんじゅう、ごはん」
「……まんじゅう」
「………にゃー」
ようやく目を覚ましたこねこをまことくんはそっと地面におろしました。
名前がつけられたばかりのこねこのまんじゅうは、牛乳のにおいをくんくんかぎました。すごくよいにおいです。ぺろりとなめました。おなかの中から力がわき上がってくるような、元気なあじののみものでした。
まんじゅうはぴちゃぴちゃといっしょうけんめい牛乳を飲みました。
「よかったぁ。おいしいみたいだね」
「うん。ほら、まんじゅう、こっちも食べな」
かずやくんがネコ缶をまんじゅうの鼻の先に近付けました。
くちのまわりを牛乳で真っ白にしたまんじゅうが、ネコ缶にきがつきました。
おいしいのみものをくれた2人だからと、あんしんしきったまんじゅうは、今度はすぐに一口くちに入れてみました。すると、くちいっぱいにおさかなのあじかひろがりました。
「うまいニャーッvv」
おもわず声が出てしまいました。
えいようまんてん味です。
「かずやくんっ、まんじゅう鳴いたよッ」
「うんっ。ほら、まんじゅう、もっと食べろよ。全部食べても良いんだからな」
「ニャッニャッニャッ」
まんじゅうは夢中でごはんを食べ、牛乳を食べました。
おなかいっぱいたべました。
「こちそうさまでしたニャッ。どこのどなたかぞんじませんが、ありがとうございましたニャァ」
まんじゅうは丁寧にあたまを下げてお礼を言いました。
「……どういたしまして」
思わずまことくんは返事をしてしまいました。
「何言ってんだよ」
と、かずやくんに言われたので、
「ん?なんだかまんじゅうがお礼を言ってくれたような気がしたからさ」
と、ちょつとテレながら返事しました。
そんな仕種があんまりかわいくて、ドキドキしてしまうかずやくんでした。
「まこと、このまんじゅう、どうする?」
「うーん……ね、まんじゅう、おとうさんとおかあさんは?」
「ニャッ?おとーさんは錦鯉4000000ぴき向こうで、おかあさんは今お出かけ中だニャ」
「…なんか、しゃべってるみたいだな。おい、まんじゅう、おまえ、人間の言葉がわかるのか?」
「わかるニャッ」
「そんな、かずやくん、わかるわけないよ。ねぇ、まんじゅう」
「わかるニャッ」
「そうだよな。…なぁ、まこと、こんなに人間と長い時間いっしょにいても親ネコが来ないっておかしいよ。もしかしたら1ぴきなのかもしれないな」
「違うニャっ。かおーさんはお出かけ中だニャ」
「…そうだね。……どうする?」
「……おかーさん。どこだニャー」
「うちにつれて帰ろうか?」
「でもかずやくんちはラブがいるじゃない」
かずやくんちのラブはゴールデンレトリバーっていう、大型犬です。
「うーん。でも、このままおいていけないしなぁ……」
かずやくんは本当にやさしい男の子です。
まことくんにはそのきもちが痛いほどわかりました。
「ね、かずやくん、こうしたらどうだろう。ぼくがまんじゅうをつれてかえるの」
「え?……でも、大丈夫なのか?」
まことくんちにはまことくんのおとうさんの趣味で、きれいな錦鯉がなんびきもかわれているのです。
「だいじょうぶだよ。僕がちゃんと見張ってるから。おとうさんもおかあさんもネコだいすきだし」
「おとーさん?おかーさん?!!おまえんち、おとーさんとおかーさんいるのかニャッッ!!」
まんじゅうはまことくんの言葉に反応しました。おとうさんとおかあさんと聞いて、まことくんの手にとびのりました。
「おまえんち、おとーさんとおかーさんいるのか?ぼく、おまえんち行くニャァッッ!!」
いっしょうけんめい訴える姿を見て、かずやくんはわらって言いました。
「まんじゅうも、その方が良いみたいだな。すごくよろこんでる」
「本当?」
「ほら、しっぽ見てみろよ。根元がボボッて、毛が逆立ってるだろう。根元の毛が逆立っているのって、嬉しくて興奮している時のネコの習性なんだよ」
まんじゅうは、しっぽの根元を太くして、目をまんまるにして、にゃーにゃーと鳴いています。
まことくんはまんじゅうをそっと抱き締めて言いました。
「……まんじゅう、うちにくる?」
「いくっっ!!!」
「………かずやくん、なんだかまんじゅう、行く、って、言ってくれたような気がするよ」
まことくんは、かずやくんにそう伝えました。
「うん。オレもそう聞こえたよ」
かずやくんは、まことくんの側まで行って、やさしくまんじゅうの頭を良いこ良いこしてあげました。
まんじゅうは、ゴロゴロとのどを鳴らしました。
「……よろこんでるね」
「……よろこんでるな」
こうして、まんじゅうは、まことくんちのこねこになったのでした。
++ 2 ++
「おーかさーん」
まんじゅうは、まことくんの家に来て、玄関にそっと降ろされると大きな声でおかあさんねこに声をかけました。
「おかーさーんっ。どこにいるニャーッ。僕だよーっっ。おかーさーん」
ぱたたたた…と、廊下を突き当たりまで走っていって鳴いて、お勝手に行ってまた鳴きました。
「あら、可愛いネコね。どうしたの?」
お勝手にはまことくんのお母さんが夕ごはんの支度をはじめていました。
「あら、かずやくんいらっしゃい」
「こんにちは。おじゃまします」
「かずやくんはきちんとあいさつ出来てえらいわねぇ。まことったらモジモジしちゃってきちんとあいさつ出来ないのよねー」
「おかあさんっっ!!」
真っ赤になってまことくんがおこりました。
「ニャッ??」
「ダメだよっ!!そんなことかずやくんに言っちゃっっ」
「あら、どうして?ねぇ、かずやくん」
「いえ、まことくんはいっつもきちんとあいさつしてますよ。大丈夫です」
「まぁ、かずやくんたらやさしいのね。まるで彼氏さんみたいvv」
「おかあさんっ!!」
「ニャッ?!おかーさんっ?!どこニャ?どこにいるニャッ?」
まんじゅうは、まことくんの「おかあさん」って言葉を聞いて、キョロキョロとおかあさんねこを探しました。
「おかーさんっ?どこにいるニャ?僕だニャッ、探しに来たニャッ!!」
でも、どこにもおかあさんねこはいませんでした。まんじゅうはまことくんの側に行って聞きました。
「ねぇまことくん、おかーさん、どこにいるニャ」
でも、人間にはニャーニャーとしか聞こえません。
「ん?まんじゅう、どうしたの?」
「まんじゅう?」
「はい。まこと…くんがこの子猫を拾った時に付けてあげたんです。公園の前でまるまってて、まんじゅうみたいに見えたから」
「あら、ホント。まるで温泉まんじゅうみたいね」
さあ、まことくんはお母さんにお願いしなければなりません。えいっ、と、自分に気合いを入れて、まんじゅうを抱き上げ、まことくんのお母さんの目の前にまんじゅうを見せてあげながら一生懸命に言葉を探して言いました。
「おかあさん、あのね…そのね……あのね……えーと…ね…。……あのっ、ねっ、まんじゅう飼っても良いですかっ?」
おかあさんは、ちょっと困った顔をしました。
「でも、うちにはお父さんの錦鯉がいるでしょ。もしもこの子が錦鯉を食べちゃったりとかしたらどうするの?」
「僕が絶対にそんなことさせないからっ。僕がちゃんと見張ってて、まんじゅうには絶対にコイにイタズラさせないようにするからっ」
まんじゅうは、目の前のまことくんのお母さんのことを信じられないような気持ちで見詰めていました。
(おかーさん?おかーさん?)
「まんじゅうは僕がせきにん持ってめんどうみるからっ。ごはんもちゃんと毎日僕があげるし、コイにイタズラしないように毎日見張ってるし、お家の中もよごさないようにするし……まいにちお散歩も僕がするからっっ」
まことくんはお母さんに頭を下げてお願いしました。
「だから……お願いしますっ。まんじゅうを飼わせて下さいっっ!!」
かずやくんも一緒に頭を下げます。
「僕からも、お願いしますッッ」
頭を下げて「一生のお願い」をする気持ちの2人を見て、お母さんは優しく笑いました。
「……こらこら二人とも。顔をあげてちょうだいな」
一生懸命にお願いして、顔が真っ赤になってしまっているまことくんも、そんな一生懸命な姿を見て、心を打たれたかずやくんも、真剣な表情でした。
まことくんがこんなに一生懸命にお願いするのは初めてです。お母さんはそれに気付いて思いました。
(……まったく、お父さんとそっくりなんだから…)
まことくんのおかあさんは、まことくんと、かずやくんと、それからまんじゅうの頭を優しく撫でてこう言いました。
「やくそくしてちょうだい。いきものを飼うっていうことはたいへんなことよ。だれよりもあいじょうをそそいであげられますか?」
『はいっ』
二人の声がお勝手に響きました。
「一生よ。一生あいじょうをそそいであげるのよ。出来る?」
『出来ますっ!!』
「オレ、毎日『大好き』って、言いに来ても良いですっ!」
かずやくんは続けてそう言いました。
まことくんは、ちょっぴりまんじゅうにヤキモチを焼いてしまいましたが、でも今はそんなこと考えている場合ではありませんでした。
「約束するっ。僕、約束するよっ。だからお母さん…お願いしますっ。まんじゅうを家で飼わせて下さいっ!!」
『お願いしますっっ!!!』
まことくんのお母さんは、大きくうなずきました。
「お父さんにもちゃんとお願いするのよ。お母さんも助けてあげるから」
「…………ありがとうっっ!!!お母さんっ!!!!」
まことくんは、まんじゅうごとお母さんに抱き着きました。
「あらあら…まんじゅうつぶれちゃうわよ…」
「ありがとう、ありがとうお母さん。ありがとう」
まことくんは、何度も何度もお礼を言いました。
「やくそく、ちゃんとまもってね」
「うんっ」
「ああ、それからね…」
まことくんのお母さんは続けました。
「ねこは、お散歩しなくて良いのよ…」
その日の夜、かずやくんがお家に帰って、それからまことくんのお父さんがお仕事から帰ってきて、夕御飯の時になって、まことくんは、すごくきんちょうしながらまんじゅうのことをお願いしました。
おとうさんも錦鯉のことが心配で、はじめは反対しましたが、一生懸命なまことくんと、
「ね、あなた」
と、助け舟を出すお母さんに押し切られてしまうようなかんじで、最後はまんじゅうを飼うことをゆるしてくれました。
「…ありがとうお父さんっ!!」
まことくんの本当に嬉しそうな顔を見て、
「大事にするんだぞ」
と、思わず笑いながら言ってしまう優しいお父さんなのでした。
まことくんの部屋で、まことくんと一緒のベットで眠りながらまんじゅうは悲しい気持ちで一杯でした。
(…おかーさん、僕のおかーさんじゃなかったニャ…まことくんのおかーさんだったんだニャ……)
まんじゅうは、おかあさんねこのことを考えました。
優しくて、綺麗で、強くて、優しくて…暖かくて、優しくて、柔らかくて…優しかったお母さんねこ。一緒に過ごした時間のことを思い出します。
美味しかったおかあさんのおっぱい。どこからか持ってきてくれた美味しいもの。優しい言葉。アジサイの下での大切な時間…。
「……おかーさん……」
おかあさんねこがいなくなった日。
絶対渡っちゃダメですからね、と、教えられた道路にあった真っ赤な染み。ぐちゃぐちゃのお肉の中から血のにおいにまじって、かすかに嗅いだおかあさんのにおい……。
(…でも、おかーさんはあんな色してなかったもん…)
茶色の輝くような毛皮のお母さんねこ。
まんじゅうは、心のどこかであのぐちゃぐちゃになったものがおかあさんなのかもしれないと感じていました。うまれてすぐになくなった、おにいさんとおねえさんも、道路で同じ形と色をしながら、おにいさんとおねえさんのにおいをさせていました。カアカアとカラスは鳴きながら美味しそうにまんじゅうのきょうだいも……おかあさんねこも…食べました。
----たとえ一匹になっても一日でも長く生き続けなさい-----
アジサイの下で言った言葉を思い出します。
(……でも、おかーさん、一匹はやっぱりさみしいよ…)
まんじゅうは、ちいさくちいさくちいさくまるまって、本当のおまんじゅうのようになって顔を隠して泣きました。
(………おかーさん……)
暗闇に、まんじゅうのすすりなく声とまことくんの寝息が聞こえていました。
「おいで、まんじゅう」
翌日まことくんが学校に出かけてしまった後、まことくんのお母さんはまんじゅうを呼びました。
「……なんだニャァ?」
トコトコとまことくんの部屋から廊下に出ると、まことくんのお母さんが手招きしました。
「まんじゅう、おいで。一緒に下でひなたぼっこしましょ」
ひなたぼっこは大好きです。まんじゅうは夕べ泣いて凹んでいたので、誰かの側にいたいと思い、トコトコとまことくんのお母さんのところへついていきました。
1階のリビングは大きな窓が3つもあって、お天気の良い日には太陽の光で部屋の中がとても明るくなって、暖かくなります。
「わぁvあたたかいニャー」
まんじゅうも、そのすてきなリビングが一度で大好きになってしまいました。
まことくんのお母さんは、リビングに感動しているまんじゅうを両手で抱き上げました。
「やーん、ちっちゃいわねぇvv」
まことくんのおかあさんは思わずまんじゅうにほおずりしてしまいました。
「やわらーいvv」
まことくんのお母さんは、実は無類のネコ好きなのです。
ネコが飼いたくて飼いたくて本当はどうしようもなかったのですが、お父さんの錦鯉好きも良く知っていたので、飼うことをあきらめていただけだったのです。
「さあ、まんじゅう、ひなたぼっこしましょうねぇ〜」
クリーム色のソファに腰掛けます。その両足の上にまんじゅうを置きます。
まんじゅうは、とまどいながらもじっとしていました。
すると、まことくんのおかあさんは優しく優しく、まるで毛だけに触れるような優しさで、背中を撫でてくれました。
「背中、むしられちゃったの?…可哀想にね。…でも大丈夫だからね。半年もしたら綺麗になるからね」
まことくんやかずやくんとは違ったあいじょうのある撫でかたでした。
包み込むような、安心させてくれる暖かな撫でかたでした。まるで、おかあさんねこに毛づくろいしてもらっているような…そんな感じの優しさです。
(…おかーさんみたいだニャー…おかーさんって、みんなこんなに優しいんだニャー…)
あんまり気持ちよく撫でてくれるから、まんじゅうは、一分もしない内に咽をゴロゴロと鳴らし始めました。まことくんのお母さんは、ネコのツボを的確に押さえたマッサージまでしてくれます。暖かくて気持ちよくて…まんじゅうは、あっという間に眠りについてしまいました。
久し振りの暖かな眠りです。からだも心も暖かくて、しあわせでした。
守られているような安心感が、一匹になってしまって以来の深い眠りに連れていってくれました。まんじゅうは、ねことして最上級の眠りをさせてもらいました。
まことくんのお母さんは、まるで自分の子供を見るような優しい表情で、まんじゅうのことを見詰めていました。
まことくんのおとうさんもまんじゅうのことをすぐに気に入りました。
もともと動物好きのお父さん。錦鯉も大好きですが、ネコのことも大好きなのです。
「まんじゅう」
「なんだニャ」
まんじゅうは、呼ぶとすぐにやってきます。
「おっ、お前、しゃべるネコだな」
ネコにも人間としゃべるネコとしゃべらないネコがいます。まことくんのお父さんは、それを知っていたのです。
「うん。僕はしゃべるねこだニャッ」
「おー、そうかそうか。可愛いなァー」
ガシガシと大きな手がまんじゅうの頭を撫でます。
まことくんのお母さんとは、ひと味違った優しさです。
まんじゅうもまことくんのお父さんのことがすぐに好きになりました。
まことくんはお母さんとの約束通り、毎日まんじゅうにあいじょうをたくさんそそぎました。まんじゅうもそれが良く分かっているので、まことくんのことが誰よりも一番好きでした。
かずやくんも、約束通りまんじゅうにあいじょうをそそいであげました。
ただ、かずやくんは、まことくんにもあいじょうをそそぎました。
「いちばんだいすきなのはまことだよ」
「…うんっ。僕も一番大好きなのはかずやくんだよっ」
あいじょうっていうものが少しだけ分かってきた二人は、少しだけ大人のキスが出来るようになりました。
まんじゅうは、すくすくと大きくなっていきました。
どんどん元気になっていきました。
とっても甘えんぼうですが、とっても良い子に育ちました。
でも、おかあさんねこのことだけがいつまでたっても、忘れることは出来ませんでした。
いつでも心に『とげ』のように刺さっていて、思い出すたび痛くて悲しくなりました。
おとうさんねこに会いたがっていたおかあさん。
まんじゅうは、どうしてもおかあさんにその願いを叶えてあげたいと思い続けているのでした。
++ 3 ++
「にしきごいさん、にしきごいさん。今晩ニャ。ちょっとお話聞いてくれますかニャー」
ある満月のよるのこと。
まんじゅうは、お庭の池へと行きました。
まことくんもまことくんのおかあさんも、まことくんのおとうさんも、おやすみなさいをしたあとなので、起きているのは池のほとりのまんじゅうだけです。
「にしきごいさん、にしきごいさん。ねているとろこをゴメンニャさい。ちょっとお話しても良いですかニャー」
小声で声をかけつづけると、大きくて、一番きれいな錦鯉が目を覚ましました。
白地に真っ赤な模様があざやかな、ミス錦鯉です。
「……あら、坊や。こんな遅くにどうしたの?」
ミス錦鯉は、まんじゅうのすがたに少しビックリしたものの、からだをうねらせながら、色っぽい泳ぎで、まんじゅうのそばまでやってきました。もちろん、決して手の届かないだけの安全なきょりを保っています。
「あなた、新顔ね。御主人様の坊ちゃんに拾われたのよね、確か」
「うん。そうだニャ」
「……良い顔してるわね。…しあわせ?」
「うん。幸せだニャッ。でも、おとーさんとおかーさんに会いたいんだニャッ」
「おとうさんとおかあさんはどこにいるの?」
「おかーさんは車にひかれちゃったかもしれニャい。でも、わからニャい。おとーさんはにしきごいよんひゃくまんびき向こうにいるっておかーさんが言ってたんだニャッ」
「錦鯉4,000,000匹……それは随分遠いところにいるのね」
「うん。おかーさんも遠いからあいにいけニャいって言ってたニャッ。だから、僕が連れて言ってあげるって言ったんだニャッ」
ミス錦鯉は胸を張ってそういうまんじゅうが少し不憫になりました。
「……でも坊や、おかあさんはもういないんでしょ」
「……でも、もしかしたらどこかにいるかもしれニャいから」
まんじゅうは、ミス錦鯉に言いました。
「あのね、今週の日曜日は『おかーさんの日』なんだって。まことくんとかずやくんが言ってたニャッ。でね、おかーさんの日には、おかーさんありがとーって、なにかプレゼントをしてあげるんだニャッ。かずやくんはかーねーしょんっていうのをあげて、まことくんはかたたたきけんっていうのをおかーさんにあげるんだって。でね、ぼくももなにかおかーさんにありがとーって、あげたいニャ。でね、いっぱい考えて決めたニャ。ぼく、おかーさんににしきごいよんひゃくまんびきあげるニャ」
それにはミス錦鯉はご立腹してしまいました。
「ちょっと坊や、それは錦鯉に失礼ってモノよ。あたし達はね、あげたり何だりするモンじゃないわ。あたしたちはね、鑑賞するものなのよ。坊やはそんな失礼なことを言いにこんな夜中にここまできたの?だったら早く戻って寝ることね。あたしの気分を損ねたら大変よ。水しぶきを跳ね上げて大暴れしてやるからね。そうしたら御主人様がやってきて、坊やなんか、つまみだされてしまうわよ」
「違うニャ。そういう意味じゃないニャッ。言い方が間違ってたニャらごめんなさい。僕はにしきごいよんひゃくまんびきぶんのきょりをおかーさんにあげたいんだニャッ」
怒って水しぶきをあげようとしたミス錦鯉にまんじゅうはきちんと謝って、それからちゃんと説明しました。
おとうさんねことおかあさんねことの間のきょりは2000キロ。その2000キロをつなぐ錦鯉をまんじゅうはおかあさんに見せたかったのです。心のどこかで、もうおかあさんねこはこの世のどこにもいないかもしれないことを分かっていても、心のどこかでは生きているんだとしんじているまんじゅう。2000きろのきょりをこの世の果てのように遠く感じていたおかあさんに、おいしそうな錦鯉を4,000,000匹並べてみせて、決して途方もなく長い距離ではないんだよと、教えたいのだと。2000キロも4,000,000匹も実際どれだけの量であるのかもわからないまんじゅうでしたが、決して無限のものではないことだけは、本能で理解していたのでした。
まんじゅうは頭の良いねこではありません。でも、いっしょうけんめいにミス錦鯉に説明しました。御立腹だったミス錦鯉も、最後はまんじゅうのじゅんすいな心に胸をつかれて、涙を流して同情してしまいました。
「……わかったわ。わかったわ坊や。あたしが力になってあげる」
そう言うと、ミス錦鯉は全身に力を入れて、体中のウロコを逆立てました。
「さ、まんじゅう、あたしの身体から一枚ウロコを剥がしなさい。御主人様に気付かせたくなかったら、一番目立たない場所を探すのよ」
「う、うん」
まんじゅうは、一番目立たない場所の、偶然ウロコの下にウロコが重なって二重になってしまっていたところのウロコを一枚だけ剥がしました。
「はがしたニャッ。…痛くないかニャァ?」
「大丈夫よ。良い?一度しか言わないからきちんと覚えるのよ……」
今夜は、満月のよる。魚は行動が活発になる夜。そのウロコを持って、坊やが生まれたって言う、公園へ行きなさい。その側に流れている川のほとりで、ウロコを高くかかげてキラキラさせなさい。そうしたら、川のコイが集まってくるから。コンテストで何度も優勝したあたしのウロコなら、どんなコイよりもたくさんキラキラ輝くから、川のコイというコイは、みんな側にやってくるから。4,000,000匹川にいるかは知らないけれど、たくさん、たくさん集まるから。
「……それをおかあさんに見せてやりなさい。坊や」
「………うんっっ!!!」
まんじゅうは、今までで一番最高の笑顔で言いました。
「みすにしきごいさんありがとニャアッッvv」
そして、全速力で駆け出しました。
あの、アジサイのある公園へ。
まよなかのどうろは人っ子一人、車一台通りません。
まんじゅうは、何のきけんにも会うことなく、公園にまでやってきました。
そして、近くの川の橋の上で、ミス錦鯉に貰ったウロコを高く差し上げ、キラキラさせました。
そのよる、きせきはおきました。
++ 4 ++
翌日の朝、まんじゅうは朝ごはんの時間がきても、ぐっすりと眠っていました。
くいしんぼうのまんじゅうが、朝ごはんの時間がきてもおきないなんて!!
まことくんはしんぱいしていましたが、こねこは眠るのが仕事なんだよ、と、まことくんのおとうさんが教えてくれました。
「だから、心配することないよ。ちゃんとまるくなって眠っているんだろ?」
「うん」
「じゃあ、大丈夫だ。本当に具合が悪くなったら、まるまることも出来なくなるんだよ。まるまって眠っているのは、そのネコが元気なしょうこなんだよ」
そう、太鼓判まで押してくれました。
「まことーっ、おはよーっ!!」
学校に行く時間がやってきました。外で、かずやくんの元気な声が聞こえます。
「あ、かずやくーんっっ!!今行くよーっっ!!」
まことくんは、大急ぎで残りの朝ごはんをおなかに詰め込み、大急ぎで2階に駆け上がり、カバンを持って、出かけました。
「いってきまーすっっ!!!」
今度の日曜日におかあさんにあげる『肩たたき券』は机の一番奥にちゃんと隠して。
『いってらっしゃーい』
まことくんが玄関をとびだして、かずやくんのもとへ走っていきます。
それから、まことくんのおとうさんも会社に出かけて、家にはまことくんのおかあさんとまんじゅうとおにわの錦鯉だけになりました。
まんじゅうは、お昼頃やっと起きてきて、リビングでお茶を飲んでいたまことくんのおかあさんのところへトコトコと歩いていきました。
ひざの上にとびのると、いつものように、優しく背中をなでてくれました。
まんじゅうは、とても幸せな気分になって、またウトウトと、眠りに落ちていきました。
あの公園のアジサイの下で眠る夢を見ました。
ミス錦鯉にお礼に行ったのは、その日のよるおそい時間。
「……あら、坊や。どうだった?」
「ありがとうニャッ。素敵だったニャッッ!!」
「……どういたしましてvv」
満月のよる、橋の欄干できせきはおきました。
キラキラと輝くウロコを目にしたコイはその橋目指して泳ぎ始めました。
やく1時間で、川のコイは皆集まりました。
コイだけではありませんでした。
フナやメダカや鮎やヤマメや、それからもっと色んな種類のありとあらゆる魚達が、橋の欄干で待っているまんじゅうのところに集まったのでした。
総数は2000匹。
4,000,000匹には遠く少ない数でしたが、川をうめつくしたその魚達は皆、まんじゅうのためにと集まってくれた素敵な魚達ばかりでした。様々な魚がまんじゅうを見上げて言いました。
『いつか、お前の願いを叶えてやろう。今は全部で2000だが、いつか、4,000,000匹ここに集って、お前の願いを叶えてやろう!!おまえの願いを叶えてやろう!!!』
まんじゅうにとっては、2000匹は4,000,000匹と同じくらい一杯で、たくさんでした。
まんじゅうは、皆にお礼を言ってから、満月と星空を見上げて大きな声で叫びました。
「おかーさぁんっ!!お魚だよーッ!!!おとーさぁんっっ!!いつかお魚よんひゃくまんびきならべて、おかーさんと会いに行くニャーッ!!!………ありがとーっ!!!みんな、ありがとーっっ!!!!」
この世のどこかにいれば……いえ、あの世のどこかにいたとしても。
届いてしまうくらい、おおきなこえでまんじゅうはいつまでもいつまでも叫んでいました。
まことくんも、かずやくんも知らない、甘えんぼうねこのまんじゅうの、ぼうけん。
おわり。
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