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「すごいもも」
5

 まことくんとももちゃんが、お勝手に向かってぜんそくりょくで走っているころ、かずやくんは、あまりにもすごいお勝手に、声も出ませんでした。
 かずやくんのとなりでは、かずやくんのおばあちゃんが、やっぱりすさまじいことになってしまっているお勝手に、声も出ませんでした。
 冷蔵庫はあけっぱなし。中の食料はみんな食べ散らかされてしまっています。
 戸棚もあけっぱなし。中に入っていた、おやつはみんな食べられてしまいました。
 シンク下の扉も、つり戸棚もみんなあけっぱなし。乾物まで食べられてしまっています。
 れいとうこの氷も、やかんの中の麦茶も、みんな食べられてしまいました。
 そしてなにより。
 「…………もも……うまい……うまい…」
 お勝手のテーブルの側の床に、おばけは座り込んでいました。
 大きなびんを抱えています。
 同じ大きさの空のびんが、2つ転がっていました。
 おばけは、直接びんの中に手を突っ込んで、中の物をすくっては口に運んでいました。
 「……なんてこと……」
 かずやくんのおばあさんは、腰を抜かして座り込んでいます。
 たんせいこめて育てたももは、1つだってむだにしないのが、かずやくんのおばあさんの誇りであり、おじいさんへの最大のあいじょうひょうげんです。
 形のわるかったももや、小さすぎたももを集めて作ったもものじゃむは、かずやくんのおばあさんの自慢料理です。1年とおして楽しめるもも料理でもあります。ぱんにぬったり、ぜりーにしたり、びすけっとにはさんだり、でざーとそーすにしたり、それから他にも色々出来ます。近所でも評判で、わけて欲しがるおくさまがたがたくさんいます。
 大きなびんにいくつも作って、のこりはたったの3つになってしまったいた、大切なもものじゃむ。
 それをおばけはぜんぶ食べてしまったのでした。
 しかもとてもおぎょうぎのわるい食べ方です。
 おばけもそのまわりもみんな、ももじゃむみどろです。
 べたべたのお勝手は、1週間ぐらいでは片ずけられないくらい汚れてしまっていました。
 さすがのかずやくも、このおぎょうぎのわるさにはびっくりです。
 しばらくは何も言えませんでした。
 「………ねぇ……おかわりちょうだい……」
 おばけは、地の底から響いてくるような、おばけ声で言いました。
 「………もっと食べたいよぉ……」
 おばあさんは、大切なももじゃむを食べられてしまって、半ば放心じょうたいです。
 このおばけをしからなくっちゃいけない。
 かずやくんは、そう思いました。
 おなかに力を入れて、大きく息をすって、にぎりこぶしを作って、力を入れて叫びました。
 「こらっ!!ダメじゃないかっ!!!」
 おばけは、その声を聞いて、じろりとかずやくんの方に目を向けました。
 大きなからだには、不自然なくらいの小さな目です。
 「…………おい、ぼくが見えるのかぁ……」
 おばけは言いました。
 「あ、あたりまえだよっ!!そんなに大きいからだ、見えないわけないじゃないかっ!!」
 「……ぼくの声……聞こえるのかぁ……」
 「きこえるよっ!!あたりまえだろっ!!」
 おばけはとってもビックリしました。今まで自分の声が聞こえたっていったら、まことくんしかいなかったのですら。おばけは、もも園にあるすごいももから離れることがなかったから、自分が一番はっきり見えるうしみつどきは、いつもひとりぼっちでした。
 だから、自分の声が聞こえるような時間たいがあることすら知らなかったのです。
 「……どうしてぼくの声が聞こえるのぉ?……」
 「聞こえるからに決まってるだろっ。理由なんてないよっ!!」
 「……うへへへっ…」
 状況はさておき、うれしくなってしまったおばけでした。
 「こらっ!!笑ってるばあいじゃないだろっ!!こんなにちらかしてっ!!」
 「……ももにんげん……」
 「……え?」
 おばけは思い出して言いました。
 「…ももにんげんは?」
 「ももにんげん?」
 「ぼく…ももにんげん食いにきたー。いけねー…忘れるところだったぁ…おい、お前、ももにんげん、ちょうだーい」
 「な、なんだよっ。ももにんげんって」
 「おまえと一緒にいた、ももの気持ちになっちゃう子だよ。…さっきおふろで、ももの匂いさせてた子だよ」
 おばけはまことくんのことを言いました。言ったら、またおなかがすいてきて、ぐーっと、おなかがなりました。まことくんの味をそうぞうして、うれしさと、きたいに胸をふくらませ、にたにたと笑いました。
 「ど、どうしてまことがももにんげんなんだよっ!!」
 かずやくんは、おばけがまことくんのことを言っていることに気がつきました。
 「食べるってどういうことだよっ!!」
 「うへへっ…」
 「まことは、ぼくの大事な人だっ!!おまえなんかに食べさせないぞっ!!!」
 「いやだよーだ。食べちゃうもんねー…」
 おばけは、心の底までおばけでした。おそろしいことを平気で言いました。
 「ばあさんっ!」
 遅れてかずやくんのおじいさんがやってきました。
 「おじいさんっ」
 おばあさんは、泣きそうになりながら言いました。
 「おじいさんが大切に育てたももが…ごめんなさい。ごめんなさい」
 おじいさんは、かずやくんのおじいさんです。大切な人を気遣うこころは、どんな時でも決して忘れません。
 「わしは、お前の方が大切じゃ。大丈夫か?けがはないか?」
 「わたしは大丈夫。…でも、ももが…」
 かずやくんのおじいさんは、おばあさんが指差した方を見ました。そこには、ももじゃむみどろのおばけが座っています。
 「………お前は……」
 おじいさんは、ビックリしたものの、流石に声は上げませんでした。
 それどころか、どこか見覚えがあるなと、この緊急事態の中でも冷静におばけを見ることが出来ました。人生経験の豊富さのたまものです。
 かずやくんのおじいさんは、おばあさんと、それから隣で立ちはだかっているかずやくんをさりげなくかばいながら、記憶の糸を辿りました。
 『さわるだけでだいじょうぶ。ももはとってもおしゃべりだから』
 かずやくんのおじいさんがまだ子供のだった頃の記憶にまで糸は辿られていきました。
 「…………おお…っ」
 おじいさんは気がつきました。
 「もも語の先生じゃないか」
 「もも語の先生?」
 かずやくんが不思議そうに聞きました。
 「ああ。わしがまだかずやよりももっと子供だった頃に、毎晩枕元に立っては、ももの言葉を教えてくれた先生じゃ。ももの言葉を理解したら現れなくなったんで、すっかり忘れておったよ。久し振りですな。先生」
 「うん。げへへ…」
 先生と呼ばれて、おばけはちょっとくすぐったい気持ちです。
 「あら、知り合いなんですか?」
 「おお」
 「…じゃあ、お茶でも…」
 でも、かずやくんのおばあさんは、腰を抜かしていたので、立てません。
 「いいよ、ばあさん。無理するな」
 「……すみません、おじいさん…」
 「……しかし、先生、こんなに散らかしてもらっては困りますなぁ」
 「げへげへ…だって、おなかがすいてたんだもん」
 「だったら、どうして言って下さらないんですか。今日なんかは、わしの孫とそのお友達がおったから、ごちそうだったのに」
 「だって、はずかしかったんだもん」
 「全く先生らしくもない」
 「…いや、めんぼくない」
 「しかし、大切な先生と言えども、お勝手はわしの大事なばあさんの最も大切にしておる場所じゃ。こんなに散らかしてしまってはダメですよ。きっちり掃除してもらいますよ」
 「………はーい……」
 おばけは、じごくのそこからわきあがるような、おそろしい声でそう言うと、手や、身体や床についたもものじゃむを丁寧になめはじめました。
 「じいちゃん……すげー……。おばけに掃除させている…」
 改めて、おじいさんの偉大さを感じてしまいました。
 「か、かずやくーんっっ」
 ようやくまことくんとももちゃんがお勝手にやってきました。
 「まことっ」
 「大丈夫?かずやくんっ」
 「うん。オレは大丈夫だよ」
 こわがりのまことくんが、ここまで走ってきてくれたなんて、ビックリです。
 「待ってろって…言っただろう…」
 そう言いながらも、自分のことをそこまで考えてくれているまことくんが愛おしくてなりませんでした。
 誰もいなければ、この場でぎゅぅっっっ!!!と抱き締めて、キスしたい気持ちでした。
 でも、今は、家中の人がいます。だからかずやくんはそっと、まことくんの手を握りしめました。
 「大丈夫だよ。オレは全然大丈夫。ありがとう、まこと」
 まことくんも、キュッ…と、握り返してくれました。
 「まことくん待ってぇー……」
 どうやら、ももちゃんももうじきお勝手に到着するようです。
 「ねぇ、かずやくん、いったいどうしたの?」
 まことくんは、かずやくんに聞きました。
 「ん、おばけがーーーー」
 お勝手を散らかしちゃったんだよ、と、言おうとしたのですが、それより先に、まことくんはお勝手の中を見てしまいました。
 「…き。きゃぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
 まことくは、悲鳴を上げてかずやくんに抱き着きました。
 かずやくんは、思わずしっかりと抱き締めてしまいました。
 「かかかか…かずやくんっ!!おばけっ!!おばけだよっ!!血みどろだよぉっ!!!」
 どうやら、ももじゃむを血とみまちがえてしまっているようです。
 かずやくんは、ふるえるまことくんの耳元にやさしくささやきました。
 「大丈夫。こわくないから。オレがいるだろう?…あれ、血じゃないよ。大丈夫。あれは、ももじゃむだから」
 「……ももじゃむ?」
 まことくん、おそるおそる顔をあげて、もう一度おばけの方を見ました。
 ちょっとおいしそうに床をなめているおばけ。確かに、とても元気そうでケガをしているようには見えません。そういえば、辺りにはおいしそうなあまいもものにおいがします。
 「……本当だ」
 まことくんは、ようやく肩の力を抜きました。
 「ぼく、ビックリしちゃったよ」
 小さな声で、言いました。
 「オレもビックリしたよ」
 半分は、安心させるために。かずやくんは、言いました。
 「………ももにんげん…」
 ふと気がつくと、おばけは目をキラキラさせながらまことくを見詰めていました。
 「……え?」
 まことくんは、何のことだか分かりません。
 「……いただきまぁーす…」
 いちはやく気がついたのはかずやくんでした。
 おばけが立ち上がり、よだれを垂らしながらまことくんに飛びかかるよりいっしゅん早く、まことくんごと身体を反転させて床に転がりました。
 「大丈夫かっ!!」
 「大丈夫?!」
 かずやくんのおじいさんとおばあさんの声が聞こえます。
 まことくんは、ただただビックリして、かずやくんに押し倒された姿勢のまま、かずやくんにしがみついていました。
 おばけは、べちっ!!と、床にぶつかってしまいました。でも、すぐに起き上がってこちらを見ます。
 「ももにんげーん」
 おばけはすぐとなりです。
 「か、かずやくんっ!!ももにんげんってなにっ!?」
 「お前のことだってっ!!」
 「ど、どうして?」
 悲鳴のようなまことくんの声。まことくんは怯えて一層かずやくんにしがみつきます。
 「分かんないっ。でも、絶対あいつにはやらないっ!!オレが守ってやるから大丈夫だよっ!!」
 かずやくんは、そう言うと、まことくんを力一杯抱き締めました。何よりも大切なまことくんをももと間違えられて食べられるなんて絶対に嫌です。かずやくんは、たとえ自分が食べられてしまたとしても、おばけからまことくんを守るつもりでした。
 「まことは絶対オレが守るっ!!」
 もう一度、力強くかずやくんは言いました。言ったら、自分のまことくんへの想いが一層強まりました。かずやくんは、半ば衝動的にまことくんのほおをキスをしました。
 「おばけなんかにやるもんかっ…」
 命をかけて守るつもりでした。
 かずやくんは、身体をおばけの方に向けました。
 「ももにんげん…ちょーだい…」
 目の前にはおばけがいます。もう、5センチくらいの距離です。
 でも、かずやくんは、1ミリたりとも動かないで叫びました。
 「ダメッ!!!まことはオレのものだぁぁっ!!!」
 おばけもかずやくんのおじいさんもおばあさんもビックリするような大きな声でした。
 「………おまえ……そのももにんげん……すきなのかー…?」
 かずやくんは、言いました。
 「うんっ!!好きだっ!!だれよりも好きで、だれよりも大切だっ!!!…だから、お前には渡さないっ!!!」
 「……だれよりも…すきで……だれよりも……たいせつ……」
 おばけは、ふと、にんぎょさんのことを思い出しました。
 だれよりも大切で、だれよりも好きで、だれよりも愛していたにんぎょさん……。
 なみだが、こぼれそうになりました。
 3000年、えいえんのおばけになるために3000年。
 そのあいだ、おばけは、たったひとりでした。
 にんげんとしてのこころを失いかけながらも、にんぎょさんへの想いは失いませんでした。
 楽しい1年はあっという間です。
 でも、おばけにとっては長くさみしい1年でした。
 それが3000回。
 あいするひともまた、ひとりぼっちでさみしい3000年をすごしていたかもしれないと、おばけは思いました。
 だれよりも好きで、だれよりも大切。
 ももにんげんは、あいするひとに守られて。
 にんぎょさんは、たったひとりで………。
 「……にんぎょさん……」
 おばけは、そっとにんぎょさんのなまえを呼ぼうと思いました。
 …………でも、おばけは、にんぎょさんの名前すら知らなかったのでした。
 「…………にんぎょさーん……」
 ももにんげんも欲しかったのですが、それよりも、もっともっと欲しくて大切なものをおばけは思い出したのでした。
 「にんぎょさーんっ!!!」
 「おばけちゃんっ!!!」
 ももちゃんがお勝手に着きました!!
 おさかなの下半身なので、ジャンプしながら長い距離を移動してきました。
 全身で息をしています。
 ももちゃんは、おばけちゃんを睨んで、ゼエゼエしながら言いました。
 「おばけちゃんのばかっ!!!」
 「……にんぎょさん」
 おばけは、まるでおばけを見たような顔をして言いました。
 「…どうやってここに…?」
 「さみしいのはいやっ!!あたしをひとりにしないで……っ」
 にんぎょさんは、おばけに抱きつきました。
 そして、わんわん泣きました。
 「ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!………ごめんなさい……っ!!!」
 おばけは、しばらくして、ゆっくりとにんぎょさんを抱き締めました。
 「………………ぼくこそ……ごめんなさい……………」
 ぽつりとおばけはつぶやきました。


 夕飯を食べたお部屋で、みんなで麦茶とももまんじゅうを食べました。
 真夜中のお茶会です。
 改めて自己紹介をしあって、色んな話をしました。
 お勝手は、明日おばけとももちゃんが一緒に片すと約束しました。
 「そんな…皆でやりましょう」
 かずやくんのおばあさんは、にぎやかになったのがとてもうれしそうでした。
 「すごいもものふくろをやぶったのはぼくです。ごめんなさい」
 おばけはかずやくんのおじいさんにあやまりました。
 「なになに。おかげでわしも毎日ももにあいさつ出来たよ」
 おじいさんは笑って言いました。
 「あのね、あたし今日から名前が出来たのよ。ももちゃんっていうの」
 「うわぁ……よい名前だねぇ」
 「ね、おばけちゃん、あなたの名前をおしえて」
 「あのね、ぼくはハクトウって言うんだよ」
 「おお、先生はももと同じ名前なんですな。いや、流石です」
 「あのね、まことくんがつけてくれたのよ」
 まことくんは、テレてしまいました。
 「…そんな…ももちゃんのうろこの色が綺麗だったから思い付いただけだよ」
 「まことは名前つけるのすごい上手なんだ。まことんちのねこもまことが名前つけたんだぜ」
 『へぇー』
 みんなが感心しました。
 「どんな名前なの?」
 おばあさんが興味津々に聞いてきました。
 「あのね、まんじゅうっていうの」
 みんな、すごく良いねって言いました。
 本当は朝までお話したかったのですが、まことくんとかずやくんはまだまだ子供です。
 眠くなってしまいました。
 おばけ…いえ、ハクトウくんとももちゃんも離れの部屋を貸してもらって泊まることになりました。みんなで明日の朝もも園ですごいももをもう一度見ようねって、約束しておやすみなさいをしました。
 「……なんか、いろいろあったね……」
 2人っきりになって、また1つの布団に一緒に眠りながら、まことくんが言いました。
 「………そうだな……」
 「……でも、たのしかったね……」
 「……うん。たのしかったな……」
 それ以上は2人はなにも言いませんでした。
 だって、とても疲れて、そのまま眠ってしまったから。


 約束通り、もも園でもう一度すごいももを見ました。
 それからみんなでもも園で朝ごはんを食べました。
 おにぎりとつけものとお水とももパイです。
 とても美味しくて、あっという間に食べてしまいました。
 かずやくんのおじいさんとおばけは、ももの世話をしました。おばけは、ももを良い子良い子してあげました。
 「さすが先生。もも達が喜んでおります」
 「うん。聞こえるよ」
 それからみんなでお家に帰って、お勝手の掃除をしました。
 何とか綺麗になった頃には、もう出発する時間になってしまいました。
 「たのしかったよ。ありがとう」
 「じゃ、また来るよ。じいちゃん、ばあちゃん」
 「2人ともまたおいで」
 「今度は収穫の頃においで」
 『うんっ!!!』

 あっという間の2日間でした。
 家が近付くにつれて、まことくんは、少しさみしくなってきました。
 もうじき「ばいばい」を言わなければなりません。
 「また明日」
 明日まで、またかずやくんに会えません。
 落ち込んでいたら、
 「……なんか…明日の朝にはまた会えるのに…さみしいな…」
 と、かずやくんがつぶやきました。
 「……ぼくも……同じこと考えてた」
 そう言ってからまことくんは気がつきました。
 一緒にいることって、とっても大切。
 「はやくいっしょにすめるといいね」
 「うん……っ」
  最後の直線です。
 あの角をまがったら、今日はもうばいばいです。
 2人は、ゆっくりとあまずっぱい気持ちをかみしめながら、最後の直線を歩きました。
 「おーいっ!!」
 あ、まことくんのおとうさんの声です。
 「おーぅいっ!!」
 かずやくんのおとうさんの声です。
 まことくんのおかあさんとかずやくんのかおあさんは、大きく手を振っています。
 まことくんとかずやくんは、思わず顔を見合わせて笑ってしまいました。
 「……まったく子供扱いして」
 そういうかずやくんは、とても嬉しそうでした。
 「おとーさーん、おかーさーんっ!!」
 「ただいまぁーっ!!!!」
 2人は、駆け出しました。
 ……おやおや。
 まこちくんちのまんじゅう、かずやくんちのらぶもお出迎えです。
 2人は、元気にばいばいしました。
 ばいばいっ!!またあしたねっ!!
 ってね。
 必ず会える自信があるから、ばいばいしても、大丈夫。


 それからしばらくして。
 もも園から一枚のはがきが届きました。
 もも園で挙式をあげるももちゃんとハクトウくんの写真のはがきでした。
 『ぼくたちけっこんしました。まことくんとかずやくんもおしあわせに』
 って、かいてありました。

 ハクトウくんとももちゃんは、それからの毎日をとても大切に過ごしています。
 ていねいにたいせつに毎日を過ごしています。
 ふしぎなことに2人で過ごすとどんな1日でも素晴らしく感じるのです。
 昨日は、かずやくんのもも園でももの世話をして1日を過ごしました。
 あ、言い忘れましたが、2人は、おじいさんとおばあさんがこの世にいる限り、一緒に暮してあげるそうです。新しい家族が増えたととても喜ばれています。
 ていねいにやさしく、収穫直前のももをなでてあげます。
 そしたら、2人は気がつきました。
 「伝説のももではないけれど、このもも園のももは、みんなとってもすごいももだったんだっ!!すごいねっ。いいねっ。すてきだねっ!!」

 とてもつらい3000年?
 いいえ。
 本当の恋に気がつくための3000年です。
 
 
 おしまい。

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