++ 追加報告 ++





 まぁ、そう来るだろうとは思っていたが。


 左官屋の息子との大乱闘の後。
 俺とコウイチは午後の仕事を休んで、現場からそう遠くない救急医療センターに怪我の具合を診てもらいに来ていた。
 病院での検査は、異常なし。
 俺もコウイチも丈夫な身体をしているねぇと、医者から太鼓判を貰った。
 最初、注射をされるんじゃないかとビクビクしていたコウイチも、レントゲンが終り、CT検査も終って、診察室で医者に診察してもらい、
「…注射は……?」
「ん?して欲しい?」
 速攻拒絶で無事安心を勝ち取ったそうだ。
「まぁ、今日一日は安静にしておいた方が良いからね。頭痛や吐き気がしたらすぐに来るんだよ」
「はーい」
 廊下まで聞こえるような返事。
 出てくる時には、バイバーイなんて言って看護士に手を振っていた。
 まるで子供だ。
 俺も打撲と切り傷程度で、消毒と湿布程度の治療で終った。痛みは一週間程度で和らぐそうだ。
 受付で会計を済ませ、公衆電話から親方の携帯に電話を掛けた。
『…おう。んじゃ、まぁ…今日はそのまま帰れ。コウイチにもそう伝えといてくれ』
「あ、バイクは」
『置いとけ。組には俺から言っておくから』
「すんません。じゃ、お願いします」
『……あー雄太』
「はい?なんスか?」
 『いや…ま、なんだ……ほら、よ…コウイチは…どうだ?』
「あ、大丈夫でした。念のために今日は安静にするように言われてましたけど。…あれ?俺言いませんでしたっけ?」
『や、…じゃなくてよ…なんだ…いるのか?あいつは』
 あ、そういうことか。
「あ、すんません。今変わります」
『いやっ、そーじゃなくってよー……ま、でも変わりたいっつーんなら、しょうがねぇよな』
 自分の息子の容態が心配なのに、素直に言えないところが親方さんらしい。
 俺は、百円玉を三枚追加しながら、コウイチに受話器を回した。
「え?俺?」
「変わってくれってさ」
「ん…。何?………大丈夫。……ん……ん……。ああ、そうだな。……ん。分かった。……あ?…別に…あ、そうだ。今日俺ユウん家に泊まってく。…その方が病院から近いし。……うん…ん…そう。明日?ああ、行くよ。……いや別に来なくて良いってさ。薬も出てない。俺よりユウの方が重傷だし。…あ?……や、大丈夫だと思う。あ、待って。なぁユウ、明日仕事大丈夫かって」
「あ?俺は平気だけど」
「大丈夫だってさ。んじゃ、ま、そう言うことだから。…ん?おふくろ?…あー…いいや適当に言っといて…んー。じゃ…」
 ほい、と、受話器を返される。
 耳に当てると、もう切れていた。
「何、俺ん家泊まんのか?」
「おうっ」
 嬉しそうに返事をしてくる。
 ……こいつ……。
 何かを企んでいるのは明らかだった。
「良いだろ?ユウん家の方がこっから近いしさ」
「んー」
「な?なっ?」
「……大人しく寝てろよ」
「おうっっ」
 ニコニコ、ニコニコ、ニコニコと……。
 満面の笑みのコウイチの顔に、『いーや、俺は絶対っ、寝ないねっっ』と、デカデカと書いてあるのが見えるようだった。



 電車に乗って三十分。
 バスに揺られて二十分。
 畑の中のテラスハウス。
 ……なんて言うと物凄く聞こえが良いが、実際は築四十年以上のボロボロの貸家だ。
 外見は、昭和三十年代。地震が来たら絶対に壊れそうなヤバさだ。壁紙じゃなくって京壁ってところも古さを物語っている。
 気に入っているのは、年代物の磨き抜かれた急な階段と、旧式の畳換算で、今よりも多少広く設計されている間取り。
 一階六帖、二階六帖。台所が四・五帖で、バストイレは別。庭も二坪付いている。
 某県某市(東京まで自転車で十分)で月五万。
 破格値物件ってところが何よりの売りだ。
 押し入れの襖を開けるとイヤでも目に入る前の住人の物らしき血痕が、生々しく残っているのさえ気にしなければ、快適なこと、この上ない。
 コウイチなんかは、三階建てのやたらとデカイ家に住んでるくせに、俺の家の方をとにかく羨ましがって、何かと理由を考えては泊まりにやってくる。
『だってさ、俺、声デカイじゃん?』
 ……確かに。
 でも言っておくが、今日はしないぞ。
 絶対だ。



 案の定、コウイチは俺の家に着いた途端、やったぁっっ、みたいな顔をしながら飛びついて来た。
「なぁなぁっ、ユウ、キレたんだって?岡野君から聞いたぜーっ。つっても、あン時俺、ぼんやりしてたから何言ってたかほとんど覚えて無いんだけどさ。でも凄かったんだろ?なぁ、半殺し?半殺し?」
「んーなの、どうでも良いだろ。ほら大人しくしろって」
「なぁっ、なぁっっ。ヤツどうなったよ?教えろよーっっ」
「暴れんなって」
「教えろってっっ」
「ひっつくなってっ」
「ユーウっっ」
「……鼻の骨折って、前歯全部無くなった。多分肋骨も何本かヤッた」
 根負けして白状すると、ぱぁっっっっ…と、目を輝かせて、首にかじり付いて来た。
「すげーっっっ」
 嬉しそうに、ぎゅうっっと、しがみつかれた。
「俺さ、俺さっ、ユウキレんの大好き。もうすげー好きっ。イッちゃってるユウって、無茶苦茶格好良いからすっげーっっ大好きっ。あーっ、チクショーっ!!茶髪の野郎ーっ、頭殴りやがってよぉっ。おかげでユウのキレてるところ見れなかったじゃねぇかっっ」
「………何だよそれ」
「だってお前、滅多なことじゃキレねぇじゃん」
 コウイチは、さも当たり前のように言う。「当たり前だろ。お前じゃねぇし」
「ばーかっ。お前、自分のこと知らなすぎるぜ。ユウは俺なんかよりすげぇンだぜ」
「…はいはい。分かった分かった」
 しがみついてるコウイチをベリベリと剥がしながら怒った顔をしてみせる。
「分かったから、大人しくーーーー」
 最後まで言わない内に、まるでぶつかって来るようなキスを喰らわされる。
「…ぷはっ…コウイチっっ」
 寝てろっ!と、怒ろうにも、時既に遅く。
「……なぁ……ヤろうよ……」
 しがみつかれたまま、うっとりとした表情でねだられてしまった。
「今日は寝てろってっ。頭痛ぇんだろ?」
「痛くねーもん」
 駄々を捏ねて擦り寄ってくる。
「はいはい」
 静かに抱き寄せ、ポンポン、と、後頭部のタンコブが出来ている場所を叩く。
「〜〜〜〜ッッ」
 声も出せずに崩れ落ちる。
 な、ほら、やっぱり痛いじゃねぇか。
「そんなんでヤれる訳ねぇだろう。今日は安静にしてろって先生に言われたんだろう」
 両手で後頭部を抱え込みながら、なおもコウイチは食い下がる。
「でも、俺は今ヤりたいのっ」
 痛みのせいか、半分涙目、涙声。
 何だかいじらしくも見えてくる。
 いやいや、それは錯覚。
「駄目だ。今日は我慢しろ」
「ヤダ」
 ふう…、と、溜め息をついて。
「俺だって、我慢してるんだからな」
「………じゃあヤろうよ…」
 足下で駄々を捏ねてるコウイチの隣にしゃがみ込んで、コウイチの視線に合わせて小さくキス。
「俺もしてェよ。してぇけどさ。それでお前になにかあったらどうするよ」
「何にも…ねぇもん」
 コウイチが、上目遣いに俺を見る。
 額に小さくキス。
「後でいくらでもしてやるから。だから、今日は大人しく寝ろ。な?」
「………」
 視線を床に落とし、また俺を見上げる。
 「…ホントか?」
 「ホントだ」
 「…………」
 コウイチがまるで子供みたいな顔をする。
 宥められる寸前の顔。
 本当は無理なのも分かってるんだよな。頭痛ぇもんな。でも、したいんだよな。分かってるよ。でも今日はダメだ。
 な。良い子だから。
 眉間の辺りにゆっくりとキス。
 目を閉じてキスを受けていたコウイチの目がゆっくりと開いてまた俺を見る。
 素直な、子供みたいな表情。
「心配させんな」
「………………ん……」
 残念そうに。でも、大人しく。
 コウイチは、今日のセックスを諦めた。
「……じゃ、ユウも寝ろ」
 精一杯の交換条件。
 むやみやたらと可愛くて、
「…おう…」
 と、返事をしてやった。



 夕方六時、就寝。
 ……なんつーか……すごく、健全。



 途中身体の痛みで何度か目が覚めると、直ぐ側にコウイチの寝顔が見えた。
 布団の中は暖かくて、直ぐ手の届くところにコウイチが眠っていて。
 無防備で、安心しきった、静かな寝顔で。
 寝息が小さく聞こえてて。
 触れてェななんて思った。
 キスしてぇななんて思った。
 喘がせてぇな、なんて思った。
 やっぱりセックスしてぇな…なんて…思った。
 でも、コウイチがあんまり静かに眠っていたから……何も…頭を撫でてやることさえも…出来なかった。
 このまま寝かせてやりたくて。
 コウイチの寝息がいつの間にか俺の呼吸とシンクロしていた。
 ぼんやり呼吸を繰り返しながら、
 こいつは俺が守ってやらなきゃな……
 なんて、思った。


 血の気は多いし、ケンカも強い男だけどさ。


 眠りの谷は直ぐ側にあったらしく、俺は自分でも気付かない内に、また深い眠りに落ちていった。



 …そして俺は夜中の十二時きっかりに叩き起こされた。

「…おま……今何時だよ……」
「十二時」
 ゆさゆさと俺を揺さぶっていた両手をそのままにして俺に跨がっているコウイチが無茶苦茶楽しそうに、ニィッっと笑った。
「ヤるぞ」
「お前、今日はヤらないってーー」
「もー『今日』じゃねーもんっ。日付変わったもんねーっ」
 ベッドサイドに置いてあるデジタル式の時計を指して、得意そうに笑ってみせる。
「ちゃんと昨日は我慢したよ、俺」
 まぁ、そう来るだろうとは思っていたが。
「……お前、頭は?」
「ヘーキ」
「んな訳あるかよ」
 気が付けば既にコウイチは素っ裸だ。
「忘れるくらい気持ち良いコトしてくれよ」
 ペニスを擦り付けてくる。
「ん……」
 気持ち良さそうに眉をしかめた後、物凄く欲しそうな顔をしながら俺に視線を合わせてきた。
 まいった……コイツ、もう限界だ。
 夕方無理に我慢させたせいか、ギリギリまで気分が盛り上がってしまったらしい。こうなったコウイチはとにかく厄介だ。何が何でもヤらなきゃ気が済まない状態。
 強引に、物凄い力で右手を捕まれ、コウイチのペニスを握らさせれる。
「はっ…ん……」
 積極的に俺の手に擦り付けてくる。
「ユウ…ッ……して……くれよ……」
 物凄くいやらしい声で誘ってくる。
「大丈夫なのか?」
「いいからっ…」
 激しく腰を揺すりながら。
「…なぁ…してくれよぉ……」
 懇願された。
「後悔しても知らねぇからな……」
 覚悟しろよと言いながら、ペニスを掴まされた右手で締め付け揉みしだく。
「うっ…んっ!……」
 思わず逃げるコウイチの細い腰を左手で掴んで固定し、右手を上下に扱き始める。
「…は…んっっ…あ…後悔なんか……しねぇも……んっっ……」
「……聞いたからな…」
 俺の声に、コウイチが感じたみたいに反応した。
 


 身体を起こし、ベッドの上で壁に寄り掛かりながら胡座をかいて、その上にコウイチを座らせる。
 左手をコウイチの胸の前に回し、右側の肩を掴む。
「ほら、両手で掴んでろ」
 コウイチが言われた通りに俺の左腕を両手で抱きかかえる。
 そのまま前に体重を掛けて、コウイチの頭を俺の胸から離してやる。
「頭、反り返らせるなよ」
「ん……」
「ほら、足、開け」
「……おう……」
 ゆっくりと足が開く。
 俺は右手で勃起しているコウイチのペニスを掴み直した。
「んんっ」
 俺の左腕を掴んでいるコウイチの両手に力が入る。
「行くぞ」
「おう」
 俺は右手をまた動かし始めた。
 腕の中で、コウイチが身体をビクビクと震わせながら喘ぎ始める。頭が仰け反りそうになると、左手でぐいっと前に引き離す。
 その度頭が前に大きく倒れ込む。
「うっっ…」
 辛そうに呻かれ、思わず右手の動きが止めると、別の意味で、余計辛そうに呻かれた。
「大丈夫か?」
「……いい……から…っ…続け……んっ…は…っ……うんっっ」
 細身だが、筋肉のしっかりと付いた背中に唇を這わせると、直ぐ側でコウイチの喘ぐ声が聞こえる。俺の方を向いていないせいか、いつもと違って聞こえるのが新鮮だ。
 感じてる時に見せる表情が、角度のせいで顎ぐらいしか見えない。喘ぎ声はいつも感じている時に出す声と同じだが、角度のせいで臨場感がいつもの倍増しになる。
 何だかすげぇいやらしい。
 後ろから首筋を舐めあげると、
「ああっ!!」
 と、狼狽えたような声を上げた。
「ユウ…今の……もっと……」
 ねだられるままに、俯いて露になっている首筋を少し強めに舐めあげる。耳の付け根の手前辺りに、新しい性感帯を発見した。
「あ……ああっ……良い……っっ……」
 コウイチのペニスの先からトロトロと先走りの汁が溢れ始める。握った竿がカチカチに固くなっていく。
 オナニーやってる体勢に近いせいか、とにかくやり易かった。
 親指を伸ばして、残りの四本の指で竿を包み込み、指の腹に力を入れて、扱くスピードを徐々に上げていく。ヌルヌルとした手触りが気持ち良い。
 腕の中でコウイチがのたうちまわりながらよがり声を上げ続ける。
 限界が近いのか、コウイチの背中が俺に密着して、押して来た。
 前傾の姿勢が、射精の邪魔をしているようで、辛さのあまりの行動だった。
「ユウ…ッ…も……っ……イク……から…退け……っっ……あうっ……はっ……あ…っ…んっ!!」
「どうした……イけよ……」
 わざと耳元で囁いてやる。
 ゾクッ…っと、身体を震わせるものの、コウイチは射精出来ない。俺は、更に後ろから体重を掛けて、コウイチの姿勢を前傾にさせる。
「ううっ…テメッ…ユウ…っ…んっ…ずりぃぞ…っ……んんっ!!」
 力で抗おうとすれば、一層擦りあげる手の動きを早くしてやった。
「あっ…はっ…!……あうっ……あっ…!」
 コウイチは耐えきれないように喘ぐと、俺の左腕にしがみついていた片手を離し、掌でグリグリと亀頭を刺激し始めた。
 太腿が快感に痙攣を繰り返した。
「ああ…っ……あ…あぁ……」
 腕の中のコウイチは、それこそどうしようもないくらいエロくて、いつまで見てても、飽きなかった。
「ほら…イケよ…」
 コウイチの手を払いのけ、汁で一層ヌルヌルになった先を親指でグリグリと強く擦り回すと、快感に耐え切れなくなったのか、悲鳴のような喘ぎを上げた後、俺の左手に突然噛み付いて来た。
「痛てっっ!!」
 噛み付きながらもコウイチの腰は刺激される度に跳ね上がる。
「うう…っ…ううっ……っうっ…」
 くぐもった喘ぎを鼻から漏らす。
 ペニスの刺激を全身に拡散させ、止まることなくうねらせ続けている。
 感じているのが可愛かった。
 そんなコウイチの姿を見ていたら…もう、頭がおかしくなるくらい感じさせてやりたくなった。
 それこそ、頭の痛みを感じなくなるくらいに気持ちよくさせてやりたくなった。
 熱くなっていくペニスの感触をしっかりと味わいながら、更に動きを速めていく。
 俺の腕に噛み付いたコウイチの耳元に口を近付けて熱い息を拭き掛ける。
 そのまま首を舐り、耳朶を口に含む。舌を耳の穴深くに差し込む。
「あ…ふっ……」
 ピクリと身体を震わせながら、コウイチの歯の力が緩む。
「…感じるか?」
 もう、返事をする余裕もなくなっている。
 噛み付くものが無くなった口は、ひっきりなしにエロい喘ぎを上げ続けた。
 懇願も出来ない。
 体勢のせいでイクことも出来ない。
 とうとう、コウイチは泣き出した。
 歯を食いしばり、すぐ喘ぎに口を大きく開き、頭を振り、また喘ぐ。
 その間も限界まで大きくなったペニスは射精出来ないまま扱かれ続ける。
「イきたいか?」
 激しい呼吸と喘ぎの中、必死でコウイチが両手で俺の左腕を掴んだ。
 本当はもっと感じ続けさせていたかった。
 でも、俺ももう、限界で。
 左腕で支えていた、前のめりの姿勢のままだったコウイチを抱き寄せる。胸の中にコウイチがすっぽりと収まる。後頭部が俺の胸に思いっきり当たっていた。
 だが、コウイチはもう、全く痛みを感じていないようだった。
 身体が楽な姿勢になった途端、コウイチの全身が硬直する。解放されたペニスが、一気に頂点に昇り詰める。
「…ぁぁっっっ!!!」
 苦しそうに天井を見上げ、悲鳴のような絶頂の声を上げながら。
 本当に爆発したように。
 コウイチのペニスから、白い精液が勢いよく弾け飛んだ。

 ぐったりと身体を預けコウイチが荒い呼吸を整えている。
「…すげ……こんなの……初めてかも……」
 息も絶え絶えにコウイチが呟いた。
「もう降参か?」
「まさか………」
 なんて言いながらも自分から動くことが出来ない。
「…コウイチ」
「……ん?」
「お前のエロい声聞いてたら、挿れたくなった」
「……へへっ」
 嬉しそうに口を開けて笑った顔も、ヤバいくらいに色っぽい。
「…気持ち良過ぎて…頭…くらくらする」
「大丈夫か?」
「おう…っ」
「…無理すんな…どうする?やるか?やめるか?」
「…んな…決まってんじゃん」
 ぐにゃっ、と、身体を反転させて、コウイチが俺の服に手を掛けた。
「俺、ユウの裸…大好きだし。それに」
 力の抜け切ったのろのろとした動きで、俺のTシャツを脱がせ、そのままズボンに手を掛ける。
「ユウのコレはすっげー大好き」
 ケツを浮かせてやるとコウイチはズボンを引っ張り始めた。だが、力が抜けてて上手く脱がせられない。
「脱げ脱げ」
 両手で胴の辺りを掴みながら、股間に顔を近付けてくる。
 スボンの上から頬擦りまでしてくる。
「バカ…」
 スボンと下着を脱いでやった。
「へへ……っ…」
 弾けるように飛び出してきた俺のペニスをコウイチが嬉しそうに両手で掴む。
「俺さ…先刻…すっげー気持ちよかったんだよね……」
 そのままぱくっと口に含んだ。
「うっ……」
 いつもより熱い口の中だった…。
 鼻で荒い鼻息をしながらも、コウイチが舌を使い始める。苦しいのか、時々口をパカッと開いて、
「はあっ……」
 と、大きく息を吸う。
「……コウイチ…無理…すん…っ…な……」
 四つん這いの姿勢で、両手で俺の付け根をしっかりと掴み、ぬるぬると舌を動かし、俺を味わう。
 動きがひどく緩やかで、舌はひどく柔らかくて熱くて。
 連続して襲ってくる快感の波を楽しみながら、出来る限りそっと、コウイチの首に手を掛けた。
 俺は股間に顔を埋めているコウイチの後頭部を優しい気持ちでじっと眺めていた。
「うっ…ん…」
 無意識に俺の腰が舌の刺激を欲しがって揺れはじめる頃、四つん這いになったコウイチの腰も同じリズムで揺れ始めた。
 我に帰って引きずりあげると、興奮に目を潤ませたコウイチの視線にぶつかった。
「…はぁ……はぁ……はぁ………」
 唇を唾液で濡らしたコウイチが、うっとりとした視線を絡めて来る。
 舐められてるより直接感じた。
「…ユウ…気持ち良いか…?」
「……ん。凄く良い」
「ユウの…チンコ…すげーデッカクなってた…」
「お前が舐めたからだろ…なぁ……もう挿れるぞ。いいか?」
「……はぁ…っ……おぅ………」
 嬉しそうにコウイチが笑う。半開きの唇の間から、白い歯とピンクの舌が見えた。
 視線が釘付けになる。
 コウイチはコウイチで、俺の唇を熱にうかされたような目で見詰めている。
 ゆっくりと、舌を絡めるように。
 キスでお互いを貪りあった。
 コウイチの舌は、まだ、俺のペニスを舐める動きを続けていた。

 いつもの正常位は後頭部に負担が掛かるから、四つん這いの姿勢にさせる。いつも枕元に置いてあるローションを取り出して、たっぷりケツと穴に塗り付けてやる。自分のペニスにも両手で十分に湿らせた。
「ユウ……」
 いつもと違う姿勢に、とまどうコウイチの背中にキスを落としながら、
「これなら頭、痛くねぇだろ?…コウイチ…今すげー良くしてやるからな…」
 と、囁いて、そのまま両手で腰を掴む。
 フェラチオでデカくなったペニスをコウイチの後ろにあてがった。後ろの穴は、もう何度も出し入れした場所で、目で確かめなくても直ぐに分かる。
「んっ……」
 精液とローションに濡れた俺のペニスが、ズブズブと肉を押し広げながら、狭いコウイチの中へと入っていく。
 逃げる腰を捕まえて自分の方にに引っ張ると、更に結合が深くなる。俺の形を覚えたコウイチの身体は、根元まで挿入が終ると、全体的にやんわりと締め付けてきて、完全なくらいに密着してきた。
「……熱いな……」
「……ユウが熱くしたんだろ…」
 責任取れよ、と、言ったから、俺は大きく腰をスライドさせてやった。
「ああっっ!!あっ…あっ…はぁ…っっ!」
 コウイチは、一振り毎に頭を仰け反らせ、反応を見せる。
 ローションと精液でグシャグシャに濡れた穴の中は、いつも以上に俺を悦ばせ、限界までに勃起した俺のペニスに悦ばされた。
 刺激の強さに逃げていたコウイチの腰が、徐々に突き込むリズムに合わせて突き出すようになってくる。
「すごっ…いっ!…ああっ…うあっっ!!……ユウッ!………あああっっ!!」
 太股を強ばらせ、狂ったように腰を振る。
「コウイチ…っ…」
「あっ…あっ……な…に…?」
「お前…うっ……ケツと………前と…どっちが……良い…?」
「はっ……はっ……バカ……ケツに…っ……あっ……そこっっ……もっと……はっ……!…あっ……ケツに決まってんじゃん……ああ……もっ……と…」
「……そっか……」
「…ユ……ウは……っ…」
「ん…?」
 激しく突き上げられながら、コウイチが懸命に喋ろうとする。
「あっ……ううっ……んっ……ユウ…は…っ……俺に……いれっ……んのっ……好き…?…っうああっっ……」
「……当たり前じやん…」
「…へへっ…あ…も…っっ…ユウ…っ!!」
 コウイチのケツの中が一気に収縮する。
 腰を突き入れる度、狭い肉壁を押し広げて擦り付ける。コウイチが感じる度、締め付けは一層強くなって……一層強い快感を俺にまで与える。
 快感が欲しくて腰を振る。
 快感を与えたくて腰を振る。
 角度を変えて突き上げる度、コウイチが気が狂いそうになるくらい感じているのを反応に感じる。
 ピッチがどんどん早くなっていく。
 コウイチの身体が絶頂を目前に硬直する。
 死ぬ程の快感を与えてやりたい。
 やみつきになるくらいの快感とか。
 俺無しじゃいられなくなるぐらいの快感とか。
 コウイチの身体が小刻みに震え出す。
 射精が近い。
 これ以上は無い程に腰を突き動かす。
 悲鳴のような喘ぎが、余計に俺を興奮させる。
 感じているか?
 なぁ?
 好きだよ。
 愛してる。
 何でも最高の物をお前にやりたい。
 例えば今は、
 最高の快感。
「あああっっっ!!!!」
「……ううっっ……!!」

 例えば、
 最高の愛情とか。
「はぁっ……はぁ……っ……はぁ………」
「………コウイチ……」
「はぁ………ん……?」
「……………すっげー………好き」
「………っ………へへっ……俺も………」

 すげー好き。
 ホント好き。
 全部が。全てが。


 
 翌日俺とコウイチは、激しい筋肉痛に悩まされ、現場を休むこととなった。
 親方さんと岡野さんに無茶苦茶心配されたが、本当の理由は口が裂けても絶対に、言えない。


  おしまい

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『高野電気工事』の《そのあと》のお話でしたっっ。てへへっ。