【青い制服緑の髪】

14

 「サンジ」
 「…ん?」
 「あんまり飲むなよ」
 「何で?」
 「途中で寝られると困るからな」

 穏やかで暖かくて。ひどく満足した気分で。
 後何が足りないかって言ったら、もう性欲を満たすことくらいしか思い付かない。
 サンジは、少し酔いが回り出したのか無防備な顔でふんわりと考え込んだ後、俺の言葉の意味に気が付いて一層顔を赤くする。
 「んな…平気だっつーの」
 一旦口を噤んだが酔いのせいか、直ぐにふわりと口を開いた。
 「そのために連れて来たんだろ?」さわ…っとサンジの指が俺の太腿に触れてくる。「…な…?」
 「……ああ」
 自分でも信じられないような優しい声が出た。
 「……っ」
 ふっ…と、サンジが何かに気付いたように俯いた。
 「どうした?」
 「……ヤバい…」
 「何がヤバいんだよ」
  躊躇うような短い沈黙の後、サンジは俺の太腿を触る手に少しだけ力を入れて、呟いた。
 「俺…なんか…急に……」
 「急にどうした?」
 小さな声でぽそりと言った。
 「………我慢出来なくなった…かも…」
 もぞもそと腰を小さく揺らして続ける。
 「……なぁ…ゾロ……もうヤる?」
 ……正直、鼻血が出るかと思った。
 さりげなく鼻の下を指で触れ、鼻血が出ていないのを確認する。
 「ああ…そうだな」
 頭を撫でて、耳をくすぐり、頭を掴んで上を向かせる。
 「風呂に行くか?ベットに行くか?」
 サンジは恥ずかしそうに視線を逃がして、それから俺をじっと見上げた。
 「……ベットが良い…」

 

 

 

 

 俺はサンジをベッドの縁に腰掛けさせた。
 何度か頭を撫でると、上目遣いにサンジが俺に視線を合わせ、無言で両手を伸ばし来た。
 「ん…」
 そのまま頭を抱え込むように抱き寄せキスをする。
 始めは唇の感触を味わうようにごく軽く。それから、深く。
 少し薄くて少し固めの唇は、それでもムニムニと心地良い触り具合で、お互いに唇同士を押し付け合いながら、舌を差し込まないキスを味わった。
 先に根を揚げたのは俺の方だった。
 半開きの唇の誘惑に我慢出来なくなって滑り込ませるようにしてサンジの口の中に舌を差し込んだ。
 「んふ…」
 サンジの口元が笑ったみたいになった。
 舌を絡めて柔らかく吸い上げる。苦しくなったのか奥に逃げようとしたサンジの舌の裏側を柔らかく舐め上げる。
 「んっ…」
 料理人の舌だからかどうかは良く分からないが、敏感らしく、肩をピクリと震わせる。
 逃げようとする舌を追いかけて絡め取り、吸い上げて、くすぐった。サンジの舌は繊細で、貪るようなキスよりも確かめるように絡ませる柔らかなキスを喜んだ。身体を震わせて昂って行く。
 舌を引っ込めると、慌てたようにサンジの舌は追いかけてくる。俺の唇を超えた瞬間、ヒュッっと息を吸いながらサンジの舌を吸い込んでやった。
 「うう…ん…っ」
 柔らかく舌で包み込み、口の中を窄めて口全体でサンジの舌を犯してやった。初めての感覚なのか、全身を震わせて感じていた。お互いの舌の温度が完全に混じり合い、同じ温度になって行く。
 サンジは性器みたいに舌を犯される感触を追いかけているうちに受け入れ態勢に入ったのか、身体の力がすとんと抜けた。俺に身を委ねるようにしなだれかかり、最後には一人でベッドに座っていられなくなった。
 「ぷは…っ…」
 じっくりとキスを味わいサンジの舌を解放してやると、溜め息みたいに息を吐くと、じんわりと濡れた表情で俺の顔をじっと見詰めながらズボンのベルトに手を伸ばし、震える指先でベルトを外して、ジッパーを『ジジジ…』と下げた。
 「……うわ…」
 下着から引き摺り出して来た俺のチンコを見て、サンジが感嘆の声を漏らした。
 「…でけぇ…」
 何の刺激もしていない俺のチンコは既に勃起し始めている。サンジが手を添えていなくても芯が一本通ったように固さを帯びて、天を向き始めている。
 「デカイか?」
 「ああ…こんなにでかいサイズだったんだな」
 「知らなかったのか?」
 サンジは俺のチンコを見詰めたまま熱っぽい声で言った。
 「…いつも見てる余裕もねーから…」
 ほっそりとした器用な指が俺のチンコを直で握った。
 「う…っ…」
 思わず声が漏れた。
 サンジは俺の声にハッとしたように少しの間だけ目を見開いた後、また惚けた表情に戻りながら「なぁ…舐めても…良いか…?」と、聞いて来た。
 「……ああ…」
 さらりと頭を撫でてやると、サンジは唇を舌で濡らし、直後パクリと俺のチンコを銜え込んだ。
 柔らかな舌が俺のチンコを包み込むようにして張り付いてくる。包み込むって言っても、裏側の一部分に程度しかカバー出来てはいないが、それでも十分に気持ちが良い。
 指先同様動きは器用でぴったりと全体的にくっつけたままでやわやわとした繊細な動きも出来るところが気に入っている。
 多分尽くすタイプなんだろうサンジの舌は、丁寧に丁寧に俺のチンコを味わうように舐めて行く。
 「…旨いか?」
 ベッドの脇、サンジの前に立って腰を突き出し、アヒルみてェな形の良い頭に手を掛けながら尋ねた。
 サンジは上目遣いに俺を見上げると、僅かに目を細めて笑ってみせた。
 「……っ…」
 厭らしくて可愛い微笑。
 口の中には収まり切らなくなる程勃起した俺のチンコを懸命に喜ばせようとしている姿。
 チリチリした電気のような快感に胴を震わせながらワイシャツのボタンを外し脱ぎ捨てる。アンダーシャツも一気に脱いだ。
 「ほら…お前も脱げよ…」
 声を掛けると少しだけ舌の動きが鈍くなり、舌の方からカチャカチャとベルトを外す音が聞こえた。
 器用に俺を銜えたまま、腰を浮かせて下着ごとズボンを脱ぐ。床に落ちた細身の黒いズボンを拾い上げ、皺にならないようにサイドテーブルの上においてやると、また上目遣いに俺を見上げて目元を緩ませた。

 男の身体は男の方が良く分かる。
 確かにそうなのかもしれない。
 昔付き合った誰よりもサンジの舌は俺の感じる場所を正確に見つけ出し絶え間なく刺激し続ける。
 特にカリ先の舐め方は病み付きに成る程気持ちが良い。
 「うっ…は…っ……んっ…」
 快感がせり上がって来るように口から喘ぎの声になって漏れた。
 サンジは俺の喘ぎが好きだと言って微笑う。
 ゆっくりとゆっくりと緩やかな坂を昇り続けるように感じて行く。
 気が付くと自分の腰が舌の動きに合わせて揺れていた。 「うっ…」
 見下ろすと、いつの間にかシャツ一枚になったサンジが自分の形の良いチンコを完勃ちさせていた。右手は俺のチンコに添えて、左手は自分の棹を扱いていた。
 両方とも同じ動きになっちまうんだ…と、妙なところで感心していた。

 

 ギリギリのところで俺は自分からチンコを引き抜いた。
 まだ舐めたかったのか、不満そうに俺を見る。
 「…まだ飲んでねェのに」
 「悪いな。お前のケツでイキてェ」
 「………」
 エロいことは何でもするくせに、エロいことを言われるのにはいつまでたっても免疫が出ないらしい。
 ベッドに押し倒し、上に乗りかかりながらサンジのケツの穴に指を忍び込ませると、ヒクついて喜んでいるくせに、顔は真っ赤で恥ずかしそうに目を閉じている。
 俺は耳元に顔を寄せ、言葉で責める。
 「何目ェ瞑ってんだよ。ケツの穴は欲しがって開いてるぜ?ほら…もっと良く見せてみろよ」
 「やだっ…」
 最後まで聞かずに身体を反転させて四つん這いの姿勢にさせる。「なっ…」絶句して身体を固くしているサンジのケツの穴を左手の中指でグリグリ刺激してやる。
 座っていた時に後ろの方まで流れた我慢汁がヌルヌルと丁度良い感じに穴の周りを濡らしている。
 ツプ…
 「んああっっ……」
 中指の第一関節までしか入れてないのにサンジは我慢出来ずに喘ぎを漏らした。
 俺は一気にズボンを脱ぎ捨て全裸になると、サンジのシャツに手を掛ける。「ほら脱げよ」
 白い肌は滑らかで、しかも独特の良い匂いが鼻をくすぐる。たまらず肩甲骨の下側から首筋に向かってねっとりと舌を這わせた。
 「あうっ!」
 仰け反るように反応したサンジの腰がフル…っと震える。
 俺はゆっくりと自分のチンコをあてがいながら、左手でやんわりとサンジのチンコを握ってやった。
 柔らかく全体的に揉み解した後、「…声…出せよ…」しっかりと棹を握り、牛の乳搾りみたいな感じにリズミカルに扱いてやった。
 「ああっ…あっ…ひ…んっ……」
 途端に泣き声みてぇな喘ぎを漏らす。
 「……可愛いな…」
 心の底からそう思った。
 「ゾロッ…もっ…挿れ…っ…て…くれよ…ぉっ…」
 先端だけをケツの穴に挿入したままサンジのチンコを摩擦する。激しく腰を振れば俺のチンコがケツから抜けるのが分かっているから、快感を逃がすことも紛らわすことも出来ない。
 「早くっ…んあっっ!!早…くっ…ぅ…」
 苦しげにサンジが俺に懇願した。
 「もっと奥に…くれよぉ…っ…っ」
 半泣きの懇願。
 「厭らしいヤツだな」
 「…んっ…そんなっ…おっ…お前が…ああっ……させてんだ……ろっ…!!」
 「そんな感じるのか?」
 ケツを突き出した姿勢のまま、何度も何度も頷いた。
 「だから…早…く…ぅっ……」
 首を捻って、一生懸命に俺に視線を合わせようとする。
 「挿れて…っ…お前の…欲し……っ……」
 「サンジ…」
 「うあぁぁっっ」
 名前を呼ばれただけでもサンジは乱れる。
 「言ってみろ…どこが一番感じる?」
 嫌々と、子供のように首を横に振る。「そんな…っ…」 「…言ってみろよ…サンジ」
 言いながら、柔らかな耳朶を齧ってやった。
 「あうっ!!」
 挿れてっ!と叫ぶ。
 「お願いだからっ…も…挿れて…っ」
 「どこが感じる?」
 「…てめ…っ……んんっ…あは…っ…ん…」
 「言えよ…感じてんだろう?」
 言葉で嬲り、言葉で煽る。
 とうとうサンジが根を上げた。
 「ケツで感じる…から…ケツに欲し…っ…ねぇ…ゾロ…も…挿れ……て…」
 「……っ」
 本当はもっと焦らしてやるつもりだったのにな。
 「…覚悟しろよ…」
 サンジの細い腰を掴んだ。
 女みたいに綺麗な括れは無いが、形の良い小さな尻と調和の取れたかっちりとした細い腰は上から見るとかなり良い眺めだ。
 (泣いても許さねェからな…)
 ゆっくりと、だが、一切の容赦無く、突き上げるようにしながら腰を進めた。
 「っっ!!っっ!!!」
 声にならない叫びを上げながら、サンジの腰が本能的に俺のチンコから逃げようとする。だが、俺は少しも動けないようにしっかりと腰を掴み、深々と突き刺してやった。

 ズブズブと肉を押し開いて行く間隔がたまらない。
 発達した筋肉が、俺の侵入を拒むが、そんなのはおかまい無しだ。
 サンジはもう息をすることすら上手く出来ない。
 涙を流し、息を殺して必死に俺を受け入れようとする。
 メリメリメリッ!っと肉が軋む。
 それでも一年かけて俺のチンコを慣らした身体はしっかりと根本まで俺を受け入れる。
 狭い通路を抜けると、後は吸い付くように俺のチンコをしっかりと銜え込み、自ら俺を飲み込み始めた。
 「く…っ…」
 キツくて狭くて気持ちが良い。
 「あ…っ…大きい…っ……ゾロ…大きい…よぉ…」
 うわごとのようなサンジの声が聞こえてくる。
 濡れた声は、感じているのが痛みだけじゃないのをはっきりと示している。
 「良いか…?」
 「ん…っ…うん…っ…」
 ガクガクとサンジは何度も首を縦に振る。
 「奥まで…突い…て…」
 息も絶え絶えに。
 「……ああ…」
 頭がおかしくなるくらい…お前を喜ばせてやりてェ…。

 

 

 根本まで繋がり、それぞれが息を整える間もなく、快感を貪りあった。
 サンジの身体を一年掛けて教えられた。
 開発した場所も数えきれない。
 あの狭い穴は俺のチンコの全てを銜える。
 辿り着いた一番奥には、サンジが一番感じる場所がある。
 どんなに激しく突き上げても、どんなに深く貫いても、サンジの身体は俺を喜ぶ。
 お互いが狂ったように腰を振り、許容しきれない程の快感に溺れて行く。
 サンジが泣き叫びながら俺にしがみついてくる。
 「もっと!もっとっ!!」
 自分でもどうにもできない快感の波に飲み込まれながらも俺を探して俺に辿り着く。
 快感を貪り、快感を強請り、快感飲まれる。
 絶頂が近付き、腰の動きが止められなくなる頃、サンジも限界を近くに感じる。
 俺はサンジの身体を仰向けにさせ、しっかりと顔を見た。
 ピッチが上がるにつれて、苦しそうな表情が何かに耐える表情に変わり、何かに行き着こうとする表情へと変わって行く。
 おれはイクことに思考のほとんどを奪われながら、ギリギリのところでサンジを想った。

 

 ……好きだ……

 

 自分の想いの結論に、俺は自然に行き着いた。

 

 

 

 

 朝まで何度繰り返したか。
 途中で数えるのも辞めた。

 

 

 

 翌朝、ベッドの中で目が覚めると、パンの焼ける香ばしい匂いと、コーヒーの香りがした。

 「いつまで寝てんだよ」
 台所へ行くと、サンジが朝食を作っていた。
 「あと五分起きなかったらケリ起こすつもりだったぜ」
 運が良かったな、と言って笑った。
 「おはよう」
 サンジが俺に言った。
 「ああ…おはよう」
 目が覚めて誰かに『おはよう』なんて言うのは…何年振りだ?
 結局思い出せなかった。
 二人でテーブルに着いて朝食を取った。
 「俺、今日仕事だから」
 「休めないのか?」
 「そうそうと臨時休業にするのもマズいだろ」
 「…そうか…」
 もっと一緒にいてェのにな…。
 なんとなく寂しい気分なってパンを齧っていると、サンジが笑って声を掛けて来た。
 「その代わりって言ったらなんなんだけどさ」
 今日一日一緒にいれない代わりにと、提案して来た。

 「…ああ…分かった」
 嬉しくて、それしか言えなかった。
 サンジは俺のリアクションに満足出来なかったのか、俺の頭を小突いてきた。
 「んーだよっ、もっと嬉しそうな顔しろよ」
 それとも…と、サンジは続ける。
 「嬉しく無いのか?」
 慌てて否定したら、
 「…そっか」
 と、嬉しそうに、笑った。

 

 サンジが帰った後、俺は昼間でベッドで寝て過ごした。
 午後になって起き出して、掃除をして、ジョギングをして、シャワーを浴びた。
 途中何度か夕べのことを思い出した。
 思い出したら、嬉しくなった。
 何だか、すげぇ、良い気分だ。

 

 サンジは俺に約束した。
 今日の夜もまた来る、と。

 『旨いメシ、食わせてやるぜ』

 今夜も泊まると言っていた。
 
 

 今夜、サンジが帰って来たら…。
 俺の気持ちを伝えようかと思っている。

 

 お前が好きだ。

 

 サンジはどんな顔をするんだろうか。
 

 考えて、気が付いた。
 俺がサンジを好きだと言ったら、サンジは何て言うだろうか…。
 そして。
 サンジは、俺をどう思っているんだろうか……。

 「……参ったな…考えたこともなかったぜ……」

 続く

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