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 時間は掛けないって言ったクセにしっかりと四時になるまで放さなかったエースに流石に堪忍袋の緒が切れて脳天に蹴りを入れて急激に寝かしつけた後、大急ぎでパンを焼き上げ朝の分のサンドイッチを作り上げた。
 「…ったく」
 ボヤきながらも頭の中ではエースに食わせる朝飯のメニューを考える。
 和食を食わしてやろうと思ってたが時間的にアウトなんで今日も洋食にしてやる。
 しかも手の込んだメニューを作ってる余裕もねーから今日も焼き上げたパンをメインにしてやる。
 つっても…まぁ、だからっていって毎度毎度サンドイッチ食わせんのも何だから……仕方が無い。
 フレンチトーストでも作ってやるか。
 時計を見れば六時を回っている。
 「やべぇっ。開店まで後一時間半しかねーぞ」
  昨日はエースのせいで折角銭湯で汗を流したって言うのにまた汗だくになっている。
 「…クセェかな…」
 身体の匂いを自分で嗅ぐが、バターとか油の煙の匂いではながバカになっている。
 「こりゃ…シンク風呂だな」
 狭いシンクをアクロバティックに使って身体を洗うしかないよな。
 「ったくエースの野郎…」
 悪態を吐きながらも冷蔵庫からたっぷりの野菜を取り出しボウルにサラダを作る。
 少し考えてチーズを削り「……」また少し考えてボトルに入ったフライドオニオンを大さじ一杯振りかけておく。
 思い出したようにリンゴを一切れを角切りにして蜂蜜に漬込み、「あ、そうそう」コーヒーメーカーで二人分のコーヒーをセットする。
 ゴポゴポッ…とコーヒーメーカーが水を啜る音を聞きながらショーウィンドウに並べるサンドイッチの順番を考え、エースと食べる朝食の段取りを考える。
 ボイルしたウィンナーをフライパンで軽く炙り、ドレッシングで和えたサラダを山盛りに盛り付けた大きめのプレートに山盛りのサラダに焼きたてのウィンナーを乗せる。
 解きほぐしたタマゴに砂糖と生クリームで少し甘めに味付けした液に厚めに切った焼きたての自家製パンを浸し込む。
 たっぷり卵液を吸ったパンをじっくりとフライパンで焼くと、厨房にフレンチトーストの甘い香りが一杯に広がった。
 出来たコーヒーにたっぷりの牛乳を混ぜてカフェオレに。牛乳の好きなエースには牛乳も紙コップに一杯分用意する。
 蜂蜜につけ込んだリンゴの角切りをプレートのサラダの隣に小さく積み上げ、その上に大さじ一杯分のヨーグルト。それからその上にリンゴを漬けていた蜂蜜を回し垂らす。
 最後に焼き上がったフレンチトーストをプレートに乗せ、粉砂糖とシナモンをかければ「…よしっ」出来上がりだ。
 右手にプレート二人分。
 左手にカフェオレがたっぷりと入ったマグカップ二人分。
 「…あ、いけね」
 エースに用意した牛乳の入ったコップを持ち忘れていたのに気が付いて急いで飲み物はトレーに乗せる。
 「よしっ。今度こそ」
 言いながら二階に上がって行く。
 「エース、メシ」
 ベッドの上で満足そうにゴロゴロしていたエースがぴょこんと起き上がる。
 「おーっ良い匂い」
 「今日は何時から?」
 「いただきまーす」
 「ん。一杯食えよ」
 「んとね…あ、一限目にゼミだったっけかな?」
 「んじゃ、そんなにゆっくりもしてらんねーな」
 「そだな。なに?まだし足りないとか?」
 「アホ」
 ソーセージをわざとエロく舐め出したエースの頭をゲンコツで叩いて顔をしかめる。
 「食いモンで遊ぶなっ」
 「へーい」
 「そっちじゃなくて。一限目から入るんだったら八時には研究室に入ってなきゃダメなんだろ?」
 「ん?別に八時半でも良いけど?」
 「バカ。そのまま教壇に立つつもりかよ?ザーメン臭くて何してたかバレバレだぞ」
 「別に良いけど?」
 「俺が良くねーよっ」
 「んな、大丈夫だって。俺が誰かのザーメンの匂いさせてんのなんて珍しいことじゃねーから」
 「お前が良くても俺は良くねーよっ」
 「……サンちゃん可愛ーなぁ」
 (お前に言われたかねーよっ)
 満面の笑顔で笑うソバカス顔の方がよっぽど可愛いわっ!!
 「いいから早く食え。そして研究室へ走れ。そしたらシャワーを浴びろ」
 「えー」
 「い・い・か・ら・言・う・こ・と・を・聞・け・っ」
 「……はーい」
 そう。聞き分けの良い子が好きなんだ。俺は。

 

 

 

 

 飯を食い終わったエースに、狭い洗面所で顔を洗わせ歯を磨かせた後、絶対にシャワーを浴びると約束をさせて俺の部屋から送り出した。
 一応正門にエースの姿が見えなくなるまで見送ってやり、その後急いで食器を洗いシンクを綺麗にし、その場で頭を洗って顔を洗い、歯を磨いて絞ったタオルで身体も拭いた。
 「シャワーだけでも良いから欲しいよなぁ…」
 こういう時は風呂の無い家は不便なこと仕方が無い。
 冗談抜きで彼女が出来たら引っ越しを検討しなきゃヤバいと思うね。
 女の子にはこういうことさせられないもんね。
 何とはなしに部屋を眺めてベッドを眺める。
 「………っ」
 シーツの乱れたベッドに昨日の名残と今朝の記憶が重なった。
 「…いやいや。俺達付き合ってねーし」
 キスだってしてないしな。
 「………」
 ぼんやりとエースのことを考える。
 人懐っこい笑顔とか。
 満面の笑顔とか。
 犬みたいに擦り寄って来るところとか。
 組敷いてくる時の力の強さとか。
 研究者らしくない発達した筋肉ととか。
 裸になった時の肌の滑らかさとか。
 暖かさとか。
 声とか。
 表情とか。
 「………つっても男だしな…」
 野郎のこと考えてて顔が熱くなるのって…どうなんだよ。
 そりゃ、自分でもどうかしてるんじゃないかって、心配にもなるぜ?
 どうにしたってエースは無し、だ。
 だって。
 「…マルコさんのモンだもんな…」
 考えて、いつもの場所に考えついて。
 当たり前じゃないか。
 何考えてんだよ、って自分で自分突っ込んで。
 何だかんだ言っても結局は寝言ではいつでもマルコさんの名前を呟いてるソバカス顔の野郎は、やっぱりどう考えたって、俺の『相手』にはなる訳ないんだ。
 第一。
 アイツも男だし。
 いつもの結論に達して「…はは…っ」笑う。
 何考えてんだよ。バカじゃねーか?
 自己嫌悪にちょっと陥って。
 それでも、エースの腕の中とか思い出してみたりして。
 「………チッ」
 何だか少し、寂しくなった。
 「……さ、仕事仕事」
 わざと声に出して強引に顔を上げてみる。
 「さて、もうじきラッシュだ。さっさと捌かなきゃ商売上がったりだ」
 大急ぎで服を着替えてネクタイを締める。
 今日は特別に気に入りのをつけてやろう。
 シャツの両腕を肘の所まで捲り上げて、ギャルソンエプロンをギュッと締めたらいつも通りに気分が引き締まった。
 「…よしっ」
 ようやくいつも通りだ。
 擦られたり舐められたり過ぎて過敏になってるチンコが少し気になるが、それ以外は至って普通の『いつも通り』の良い調子だ。
 狭い階段を駆け下り、厨房に入り、厨房を抜けて店舗部分へと繋がるドアを開ける。
 五分でサンドイッチをショーケースに並べて、そのまま細い扉を開けて外に出る。
 「おはよー店長」
 開店を待っていた学生の一人が眠そうな声で挨拶してきた。
 「おう。おはよ。何だ眠そうじゃねーか」
 「試験勉強だよ」
 「え?今日テスト?」
 「そ。追試」
 「そりゃ大変だ」
 言いながら店のシャッターを勢い良く開ける。
 「んで?大丈夫そうか?」
 「まぁ何とか。でも多分頭とか振ると最後に覚えたヤツとか落ちるかも」
 「ははっ。分かる分かる」
 「あー…こんなんだったらもっと早く手ェ付けときゃ良かったよ…」
 「心中お察しするぜ」
 言いながら店の中に戻り、注文を受けたピーナッツサンドとチキンサンドを袋に入れ「…ほい、じゃあコレは俺からのおまけだ」ついでにカツサンドも入れてやった「試験に負けんな」
 やったー、と喜びながら正門へと向う学生の後ろ姿を次のお客が来るまで見送り、「お、いらっしゃい」次のお客がショーケースの前で立ち止まるのを見て視線を移す。
 「何にする?」
 「んー…色々あるから悩むんだよなー」
 「そうか。そりゃありがてぇ。ゆっくり選びな」
 真剣に悩む姿がなんとも微笑ましくてこっも自然に頬が緩んだ。「何でも旨ぇぞ。しっかり悩め」
 言いながら向こうからやってくるカワイ子ちゃん三人組に目が釘付けになる。
 「おはよ〜vV」
 いつも通りの朝に、やがて先刻の寂しい気持ちが薄れて行った。

 

 

 

 

 

 『コンコン』
 「…どうぞ」
 11号研究室のドアが内側に開くと、エースがするりと部屋の中に入ってきた。
 「オハヨ。今時間空いてる?」
 「…セックスしてる時間は無ェぞ」
 「やだなー俺だってそればっかじゃ無いぜ?」
 「そうか。で、何の用事だ?」
 「今日夜何か予定とか入れてる?」
 「…いいや」
 頭の中でスケジュールを半数し、予定が入っていないのを確認したゾロが首を横に振る。
 「特に何も入れていない」
 「んじゃ、お願いしたいことあんだけど」
 「何だ?」
 「調教お願いしたいんだけど」
 「…久し振りだな。誰だ?」
 「ゾロが良く知ってる人だよ」
 「そうか…名前は?」
 「今は秘密。どうせ後で分かるしね。まだバックバージンだから優しくしてね」
 「何だ、そっちの調教か?」
 あくまでも趣味の一環で、ゾロは時折ゲイ仲間から以来を頼まれ『調教』をすることがある。
 大抵は肛門の拡張だ。
 人並み以上の一物でセックスを一晩もすれば相当なサイズのものでも銜えられるようになると評判なため、噂を聞きつけてわざわざ飛行機で駆けつけてくる者もいる程の人気だ。
 何かと顔の広いエースはあらゆる方面から『客』を取り付けてくる。
 勿論合法とは言い難い行為なので、金銭のやり取りは発生しない。
 あくまでも『偶然』に知り合い『必然的』にセックスへと発展するだけのことだ。
 ただし、ホテルの提供など一切の費用が相手持ちとなっている。
 ゾロやエース、また他のエースだけが繋がりを持っている『仲間』は相手を探すカリの気分こそ味わうことは出来ないが、純粋にセックスを楽しめば良いだけの話だ。
 「初めての相手が俺で良いのか?」
 「まぁ、大変だとは思うけどね。ケツの締まりも相当良い奴だから怪我ぐらいはしちゃうだろうしね」
 「大丈夫なのか?」
 「多分ね」
 何か含んだ物言いに、流石にゾロも気が付き訝しげな表情を見せる。
 「…お前、何か俺に隠していないか?」
 「隠してないよ。全部伝えていないだけ」
 「………」
 「でも上玉だよ。ゾロは絶対に気に入ると思うけどね」
 一瞬ゾロは向いのサンドイッチ屋の顔を思い浮かべたが直ぐに想像の中で打ち消した。
 そんな都合の良いことがある訳が無い。
 「…残念だが最近は一点狙いだからな」
 「そお?俺、結構センス良い方だけどね」
 「……」
 「どうするの?今回はやめとく?」
 「……………いや。受ける」
 「そう来なくっちゃ」
 エースが悪戯っぽく微笑うと、ゾロが訝しげに顔を傾げた。
 「お前がそういう顔をしている時は大抵何かを企んでいる時なんだが、今日は何か企んでいるのか?」
 「まぁね」
 言いながら後ろでドアの鍵を閉めると一歩でゾロの胸元へと入り込んできた。
 ぐっ…と、利き手でゾロの股間を握り締める。
 「ごめん。やっぱちょっと良い?」
 「マルコに叱られるぞ」
 「良いよ。慣れてるもん」
 それに…見上げて開いた口の中の舌が赤い。
 「俺、マルコのお仕置き好きだし」
 大きくさせるのが目的なのがはっきりと解る動きでゾロの一物を揉みしだく。
 「エース…悪いがこれから講義がある」
 「…俺もだけど?」
 指の動きが大きく大胆になって行く。
 「…俺さ、昨夜セックスしたかったんだけど出来なかったからさ…すげー身体が熱いんだよね…」
 ほら…。
 ゾロの手を取りエースは自分の股間に導いた。
 「ゾロの触ってるだけでこんなだよ」
 「……ああ」
 「…講義…自習にしちゃえば良いじゃん」
 「そうもいかない」
 「なら…あと三十分あるから、急いでしようぜ…?」 
 ゾロのての上から自分の手を添え、腰を押し付けながら自分の一物を刺激させるようにとゾロの手をリードする。
 その間も片時も利き手は休めずにゾロのものを揉み膨らます。
 「………」
 ゾロが時計を眺め、目を閉じ何かを計算し出した。
 おそらくはセックスの有効時間の計算だ。
 時間にして五秒。
 「…分かった」
 表情を変えずにエースを見詰めたままゾロは自分のベルトに手を掛け緩める。
 「前戯は無くても良いな」
 「勿論」
 嬉しそうにエースが自分の舌をペロリと舐めた。
 「マルコにスゴいのされてるから、それより感じるの出来る?」
 手早く全裸になった二人が向うのはどこの研究室にもある三人掛けのソファーだ。
 「さあな」
 素っ気なく返事をしたゾロだったが、言われなくともマルコ以上の激しさでエースを翻弄させるつもりだった。

 朝の性急な誘いに興奮したのか、ゾロの一物は数回自分で上下に揺さぶりながら擦るだけで一気に硬さと大きさが増した。
 エースの尻も昨夜と今朝のサンジとの前戯で本当に欲しくなってしまっていたのか、赤く腫上がりヒクヒクと入り口が切なげに震えている。
 ゾロは無駄の無い動きでソファーの側の小引き出しから潤滑剤を取り出し、片手で蓋を開けると直接エースの尻の割れ目に滴り落とすようにたっぷりと搾り出す。
 エースは尻の割れ目に潤滑剤が滴って来るのを感じるや否や大きく足を広げて自らの指を使って穴の奥まで滑らかに濡らす。
 「も…良いよ」
 自分の指にまで欲情したエースが急に余裕の無くなった口調で強請った。
 「ヤベェ…俺…馬鹿みたいに興奮しちゃってるし…」
 言った言葉の最後は本当に恥じらっているようにも聞こえた。
 「っ…」
 ゾロにも余裕は消えてなくなる。
 無言で一気にエースの尻に自分の一物をあてがい突き上げた。
 グググッッ…!!
 狭さから来る抵抗感を完全に無視し、勢いで突き上げられたエースは反射的に喘ぎの声を上げて衝撃を受け止める。
 痛みよりも強く早く快感が五感を刺激する。
 「ああ…っ…いい……っ!!」
 抱くのも好きだが、抱かれるのはもっと良い。
 エースはゾロに突き上げられながら昨日の夜から興奮していた身体の奥の欲求を満たすべく、ゾロと一層深く繋がろうと腰を揺らした。

  セックスをしながらエースは更に今夜のことを想像する。
 共に好きな男同士のセックスが見れる。
 出来れば自分も交じりたい。
 思いながら善がり続けた。

 続く

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