【かわいいこっくさんとほぞんしょくのかみさま】
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船上の天然度ナンバーワンの地位を不動のものとしている、ごーいんぐめりー号のかわいいコックさん、サンジをご存知ですか?
さらさらの金色の髪は、見ているだけでいい子いい子してあげたくなるような感じがしていて、くるりと巻いた独特の眉毛は、見慣れると、とってもキュートに見えてしまう、今年十九才のとってもきれいでかわいい男の子です。
黒いスーツできめちゃって、未成年なんだけどトレードマークはなんとタバコです。
心優しくて、お料理がとっても上手で、分かっているようで分っていなくて、でも、時には誰よりも良く気が付いたり分かってあげたり出来るすてきなコックさんです。誰からも愛されて、だから……って訳じゃないけれど、ごーいんぐめりー号のクルーのみんなを愛している心優しい料理人です。
時にはテーブルマナーを教えてあげる恐い先生だったり、時にはお腹いっぱいおいしいご飯を食べさせてあげるお母さんだったり、時には命を掛けて皆を守るお父さんだったりします。
『ばらてぃえ』っていう名前の、世界で一番おいしくて素晴らしい、おさかなの形をしたレストランの副料理長さんって輝かしい経歴を持った人だっていうのは、ちょっと有名な話だそうですよ。
そんなコックさんは、最近ちょっと気になる人がいたりします。
その人は、同じごーいんぐめりー号のクルーの一人だったりします。
ナミさん?
いえいえ、違います。
ロビンちゃん?
ざんねん。それも違います。
ビビちゃん?
嬉しいですね。彼女のことも覚えてくれていたのですね。でもでも、ざんねんながら、彼女でもないんです。
かわいいコックさんは、もちろんみりょくてきな三人のレディたちも気になりますが、それよりもっともっと気になって仕方がない人がいるのです。
え?後はトナカイと、長鼻と、マリモとゴムしかいないって?
ふっふっふっ…………。
事実はマンガより奇なりなのですvv
『その人』は、普段はのんびりと、ででーん!と、船のどこかで平和そうにねむっています。夏島の側では涼しい所でねむっていて、冬島の側では暖かいところでねむっています。ごーいんぐめりー号の一番かいてきな場所を本能的に見付けることが出来るのかもしれませんね。
子猫は一日の大半をねむって過ごすそうですが、その人も一日の大半をねむって過ごしています。かなり良い勝負です。ごーいんぐめりー号が平和だったら、ごはんとトイレとトレーニング以外はねむって過ごしているとかいないとか。見張りの時でもねているそうです。
とにかくいっぱい眠ります。
それでも夜もぐっすりと男部屋でねむります。
彼のねむりは平和の証拠。
だからクルーのみんなは、文句をいいながらも結構そっとしといてくれたりします。
あんまりいつでもねてるから、若干、ろうごのことが心配ですが、本人はいたって気にもしていないみたいです。
信じられないかもしれませんが、寝起きはかなり良い方です。
いきなり敵船のかいぞくたちが攻め込んで来ても、さっくり殺されてしまうことは絶対にありません。
ビカビカッッ!!と、目覚めて、いきなりトップスピードで戦いに参戦出来るつわものです。
おやじしゃつとか、はらまきとか、着ているものはかなり微妙ですが、これもサンジのまゆげ同様、見慣れてしまうとそれ以外は無いんじゃないかってくらい、その人に似合っているから不思議です。
サンジと同じ十九才。
サンジより一センチだけ高い身長。
いつでもサンジとはケンカばかりしているけれど、闘う時には自分の背中を預けます。
きれいな深い緑の髪の毛。
胸にあるのは、ミホークとの戦いの証。
男らしい、とっても意思の強そうな表情。
ホントは、びっくりするくらい端正なつくりの顔。
三つのピアスとか、
三本の刀とか。
一回見たら、きっとそう簡単には忘れられない感じの人です。
未来にだいけんごーを目指す人です。
名前は、ロロノア・ゾロって言います。
サンジは、そんなゾロが最近とっても気になります。
先日、サンジはゾロが出てくる夢を見ました。
ちょっと…いえ、とってもエッチな夢でした。
随分シュールな夢でした。
醒めて欲しくない夢でした。
目が覚めて、サンジはとてもドキドキしました。
暫くはゾロのかおをちゃんと見ることさえ出来ませんでした。
必要以上にいしきしてしまうから、いらないケンカまでしてしまいます。
『…テメーいい加減にしろっ』
『………ヘッ…ウゼェんだよっクソマリモッ!!』
……本当はこんなことが言いたい訳じゃありません。
なかよくしたいし、笑いあいたいし、出来ればいっしょに甲板でおひるねしたいと思っています。
でも、どうしても意識しすぎてしまって、ゾロの前ではすなおになることが出来ません。
けんかしてしまっては、その度に、キッチンで落ち込んでしまうコックさんなのでした。
(…あーあ…なんでかなぁ………)
理由はちゃんとは分かりません。
意識すればするほど、したいことが出来ません。
嫌いじゃないのに、どうしてだろう…と、サンジはずっと答えをさがしました。
腰をすえてゾロのことを考えると、冷静に答えを探し出せない自分に、サンジは長い時間苦しみました。
でも、朝ごはんをつくったり、昼ごはんをつくったり、夜ごはんをつくっているうちに、もしかしたら自分はゾロが好きなのかもな…って結論に辿り着きました。
好きだから、はずかしくて。
好きだから。すなおになれなくて。
小さい頃から変わんねぇよな……と、コックさんは一人シンクに向かって溜め息まじりに小さく小さく苦笑い。
嫌いじゃないんだから、好きなんだよな……。
つまりはけっきょくそういうことです。
でも、何ででしょう。
何よりも、誰よりも、ゾロのことが好きなような気がするのです。
ジジイが好きのすきとは違います。
ナミさんがスキvvのすきとも違います。
ロビンちゃんが好き(メロリンv)のすきでもありません。
チョッパーが好き。
ウソップが好き。
ルフィが好き。
………。
料理が大好き。
……ゾロへの気持ちは、どの好きとも違うすきでした。 コックさんは自分の気持ちが良く分かりません。
だからとても…とても困っています。
だって、ゾロが好きの『すき』って……
じぶんがこわれてしまいそうなくらい、どきどきしてしまうような『すき』だったから。
コックさんは、ゾロのことを考えるたび、胸がぎゅーっと締め付けられたようになって、かおが紅葉みたいに真っ赤に熱くなってしまうのでした。
たまにぼっきしちゃうくらい、へんないみでゾロがほしくなってしまうことまであるのです。
みんなが寝静まる真夜中に、ひとりもんもんとしながらおなにーすることもふえました。
ゾロのことを考えながらおなにーするたび、ざいあくかんと、どうしようもないくらいこうふんしてしまう気持ちとからだを持て余してしまうのでした。
たった一度のゆめのせいで、かわいいコックさんはとても悩まなければなりませんでした。
(……こまったなぁ…俺もあいつも男だぜ……)
意外にも、とても常識的な問題にも正面切って悩んでいます。
(ナミさんとかロビンちゃんとか、素敵なレディがいるのに…なんでよりにもよってあいつなんだかなぁ……)
本当にそうですよね。
でも、サンジば自分の中にある気持ちを打ち消すことはどうしても出来ませんでした。
二人の間には、何の進展もありません。
ゾロは相変わらず一日の大半を眠って過ごしています。
サンジはキッチンで料理を作りながら、ゾロのことを考えては、
「………はぁ……」
それはそれは…せつない溜め息を漏らしてしまうのでした。
「むむう…」
キッチンの戸棚の中で、なんとなく神々しいうなり声がしました。
瓶詰めや、缶詰や、パスタやチーズや干し肉や小麦粉なんかが気持ち良いぐらいぎっしりと詰まった戸棚の二段目から聞こえてきます。
そこにはサンジがお気に入りの『ながぐつ島』産の有名小麦粉の袋がいっぱい並べられています。
ぎっしりギュウギュウにストックされていて、虫いっぴき潜り込めないような隙間無しの空間の狭間から、神々しいうなり声は聞こえてきます。
「……にゃーっっ…」
あらあら。…どうやら声の主は『ほぞんしょくのかみさま』のようですね。
え?その鳴き声ってネコじゃないか?って?
いえいえ、これはれっきとした神様の鳴き声……いえいえ、声ですよ。
ほぞんしょくのかみさま
って、知っていますか?
これは、素晴らしい海賊船の中でも、特に素晴らしい海賊船の中で、たまに見ることが出来る神様です。
勿論、素晴らしいのは海賊船だけではいけません。素晴らしい海賊船の中でも、特に素晴らしいコックさんが仲間になっている海賊船のキッチンにしか宿ることは出来ないのです。
サンジは、素晴らしい上にかわいいコックさんです。
神様だって放っておきはしないのです。
ごーいんくめりー号の素晴らしいクルー全員が、お腹を空かせて遭難してしまわないように、保存食をストックするための棚の中で、保存食に紛れてみんなを見守っているのです。
かみさまの名前は、
『ぐらにゃーの』
と、言います。
小麦粉みたいな真っ白な、ヘビみたいに胴体の長ーい、ネコの顔をした神様です。
戸棚と、狭い所と、潮風と、一流料理人と、おせっかいが大好きな神様です。
ぐらにゃーのは、ここのところ何かと塞ぎがちな、かわいいコックさんが心配でなりません。
物思いにふけっては、この世のおわりのようなせつない溜め息をもらすサンジのことが気にって仕方がありません。
夜中、仕込みが終わった後も部屋に帰ろうとはせず、暫く思い詰めたように、みんなでごはんを食べたり会議をしたりするおおきなダイニングテーブルの一角を見詰めたまま動こうとしないサンジが心配でなりません。
ときおり、辺りに人が居ないのを確かめて、キッチンの奥でかくれるようにオナニーしている姿がいじらしくてなりません。
自分が宿っている素晴らしい海賊船の、一流コックが辛そうにしているのは、神様的には無し無しなのです。
「むむう……サンジは元気がにゃいにゃりなー」
いつもだったら、保存食が次の島に着くまで十分に足りていたり、保存食が少しも悪くならないで、全部おいしく食べられたりするだけで、十分ご機嫌でいられるサンジなのですが、最近のサンジにはご機嫌が足りません。
「…ああ…また溜め息なんか付いているニョだ」
せつなそうに乾燥パセリを眺めています。
「緑色したものだったら、ニャにを見てもゾロを思い出すのニャりな」
人前ではいつも通りに振る舞うサンジも、一人キッチンにいるときだけは、自分にすなおになれるようです。
「………はぁ……」
ほっそりとした指先が、さらさらに乾いたパセリを静かに砕きます。
誰かのことを思い出しているのでしょう。透き通るような白い肌をした頬が、ほんのり赤く染まります。
「……………ゾロ……」
すーっと、じーっと黙り続けたあとに、ぐらにゃーのにすらほとんど聞き取れないような小さな声で、恋するコックはゾロの名前をつぶやきました。
なんどもなんども恋をしたと思っていました。
でも、今度みたいな恋をしたことは一度もありませんでした。
この恋は、相手に想いを伝えて良い恋かどうかもわかりません。
でも、すきですきで、どうしようもなくすきで。
素敵なレデイには、ガンガン攻めの姿勢を見せられるサンジですが、今度の恋には、おくびょうに成らざるをえません。
だって、相手は、ごーいんぐめりー号のクルーであり、自分の大切な仲間なのですから。
気持ち悪いヤツだとか思われてしまったらさいごです。
もう、いままでどおりに笑ってご飯をつくることなんて出来なくなってしまうに違いありません。
サンジは、ごーいんぐめりー号をバラティエとおなじくらい愛しています。
恋とは違いますが、麦藁海賊団のみんなを愛しています。
大切に思っています。
誇りに思っています。
だから、どうしても失いたくはないのです。
どんなに、こんなに、好きだとしても…もしも……失ってしまうかもしれないのなら……今のままでいるしかないのです。
想うことだけが、今のサンジに出来る、たった一つの愛情表現でした。
サンジはキッチンの窓から注意深く外を見ました。
人の気配はありません。
サンジは注意深く耳ををすましました。
ネズミのあしおと一つしませんでした。
まさか戸棚の中から、ぐらのーにゃが自分のことを見ているなんて思いもしないかわいいコックさんは、いつものように、キッチンの一番目立たない場所に隠れてズボンのベルトをゆるめました。
ぐらのーにゃの目の前で、サンジは静かにおなにーを始めました。
「……ん…っ…」
いつもの元気なコックさんとは思えないような、しずかな、しずかなおなにーです。
長い船旅の最中に、たまりにたまった性欲を堪えきれずにバスルームで手早くすませるおなにーとはまったくちがうものです。
そっとそっと…まるでこわれものを取り扱うかのように柔らかくしずかに、じぶんのペニスに触れています。
上着は少しもみだれずに、ズボンもベルトが外されて、チャックが下ろされているだけです。
サンジは目をとじて、ゆっくりとペニスに刺激を与えています。
身体がこうふんしてきても、なだめるように、自分をこんとろーるしながら、快感ののぼりざかをゆるやかに心がけておなにーをつづけます。
いろんなことや、えっちなことはなるべくかんがえないようにして、時間をかけておなにーします。
しずかに、しずかに。しずかに、しずかに。
あんまりしずかなおなにーなので、ぱっとみたら、まるでキッチンの隅っこで眠っているかのように見えます。
でも…こうして耳をすませると、時折うねり上がって来た快感に耐えきれず、震えた吐息を漏らしているのが聞こえてきます。
(………ゾロ……)
心の中だけで、サンジは好きな人の名前をよびました。
聞こえていたのは、戸棚の中に入っている、ほぞんしょくのかみさま一匹だけでした。
ぱーん…と、戸棚が開いて、まっしろなぐらにゃーのの姿が夜のキッチンにうかびあがりました。
あはーっと笑ったような感じの表情で、サンジのことをだまって見詰めていました。
目をとじて、自分のせかいにどっぷりと浸かってしまっているサンジは、まさか神様が自分のおなにーを見学されているなんて夢にも思っていません。
徐々に耐えきれなくなってくる、快感のうねりに飲み込まれそうになっています。
「……っ……ゾ……ロ……っ…」
耐えきれずに、好きな相手の名前を呼んでしまいました。
細くて長くてきれいな足が、ビクッ…ビクッ…、っと弾けるように動きます。
身体が頂点に向かってどんどん昇り始めていきました。
ほっそりした指が、今はもう我慢出来なくなって、激しくペニスを上下に擦っています。
口は大きく開き、喘ぎ声こそこぼれないものの、熱に浮かされたような感じの熱いといきが、たえまなく繰り返されています。
天井をあおぐように、あたまがのけぞりました。
これは、サンジがおなにーをしているときに、射精しちゃう少し手前にみせるしぐさの一つです。
ぐらにゃーのは、だまってさんじのおなにーを見守っています。
心の中で、とてもきもちよくイけるようにと念じながら見守っていました。
「……クッ……」
のどの奥で、飲み込んださけび声の欠片を漏らして、サンジはペニスから真っ白くてトロリとした精液を
『ぴゅっ』
と、飛ばしました。
誰にも気が付かれないような
たとえば…男部屋のハンモックでしたとしても、誰にも気付かれないんじゃないかなぁってぐらい…しずかな、ひみつのおなにーでした。
「……はぁ……はぁ…っ……」
がっくりと身体の力を抜き、俯いたまま、サンジが荒い呼吸を整えます。
「…………」
波一つない穏やかな夜の海が、ごーいんぐめりー号ごと優しくサンジを揺らします。
「…………」
サンジはずいぶん長い時間、そこから全く動かずに、ズボンのチャックを下ろしまま、ぴくりともうごきませんでした。
細い身体がいつもよりも、ほそく頼りなくみえました。
切ない恋をしている姿、そのものでした。
ぐらにゃーのはサンジに声をかけようと思ったのですが、あまりの切なそうな姿に、けっきょく声をかけることが出来ず、
『ぱたん…』
と、保存食がぎっしりと詰まっている戸棚をしめてしまいました。
すばらしい海賊船の素晴らしいコックさんをしあわせにしてあげたいなぁ…と、ぐらにゃーのは戸棚の中で思うのでした。
つづく。
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