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「すごいもも」
3

 かずやくんのおばあさんの作った夕ごはんはとてもおいしくて、まことくんは3ばいもおかわりをしました。かずやくんのおじいさんとももの話をたくさんしましたし、かずやくんのおばあさんとお料理の話をいっぱいしました。いっぱい笑いましたし、いっぱい感心したりしました。おじいさんもおばあさんもすっかりまことくんが気に入ったようですし、まことくんもとても楽しそうにしていました。
 でも、かずやくんだけは気が付いていました。
 「まこと、なにかあったのか?」
 だから、かずやくんはまことくんを誘っておふろに2人で一緒に入っている時に、ゆぶねの中から、からだをあらっているまことくんをながめながらききました。
 「え?どうして?」
 「おまえ、ようすが変だぞ」
 まことくんは、どきっ、と、しました。
 はじめての2人きりのりょこうです。まことくんだって、いしきしないなんてことはありません。今日だけは、『じゃあね、ばいばい。また明日ね』って、言わなくても良いのです。明日、お家に帰るまで、まだまだずっと一緒にいられるのです。電車に乗ったり、軽トラックの荷台に乗ったり、すごいももを見せてもらったり、おばあさんのおいしい夕ごはんをいっぱい食べたり。ほかにも色んなことをいっぱいしたし、色んな話もいっぱいしました。そうです。かずやくんのしょうらいの夢まで聞いたのです。いつもかずやくんはやさしいし、格好良いけれど、今日のかずやくんは、それよりもやさしいし、格好良いような気がします。とても楽しい旅行なのです。お風呂から上がったら、2人きりの夜がやってくるのです。期待せずにはいられません。
 でも……。
 (はやくたべたいなぁ……)
 あの時もも園で聞いた、あの声が耳からどうしてもはなれません。
 おばけの声だったのかも……って、まことくんは思っています。
 そう思ったらこわくてこわくてしかたがないのです。
 たのしい話をしている時でも、おいしいごはんを食べている時でも、かずやくんのおじいさんのももへのこだわりを感じる時でも、かずやくんのおばあさんのしあわせそうな笑顔を見ている時でも、そして、かずやくんをそばに感じていても。
 あの時聞こえてしまった心底おなかをすかせた声と、その時感じてしまったきょうふしんをどうしても忘れることが出来なかったのです。
 でも、まことくんは、楽しんでいる姿だけをかずやくんに見せたかったのです。
 かずやくんがぷろでゅーすしてくれたこの旅行は、まことくんが楽しまなくては意味がないことを誰よりもまことくんは分かっていたのです。
 聞こえてしまったあのたった一言のために、たいせつなこの旅行がだいなしになるのは絶対にいやだったのです。
 『おまえ、ようすが変だぞ』
 一番言われてはいけない言葉でした。
 こわい気持ちを隠し切れなかった自分がふがいなくて、思わずまことくんは涙ぐんでしまいました。
 「ま、まこと、どうした?!」
 あわあわのボディータオルでうでを洗おうとしていた姿勢のまま、かおをゆがめて泣き出しそうなまことくんを見て、かずやくんはあわてて言いました。
 「ごめんっ、オレ、言い方キツかったか?ごめんっ、ごめんっ」
 「……ううん…そうじゃない。かずやくんは、やさしいよ」
 グスッ、と、鼻をすすって、まことくんは言いました。
 言ったら、涙がこぼれそうになってしまいました。まことくんは、涙がこぼれる前に、いそいで、手の甲でぐいっと目をこすりました。
 「……痛い……っっ」
 まことくんはいそぐあまりに、あわあわのボディータオルを持っている方の手でこすってしまったのです。
 「せっけんが目に入ったぁ……」
 ものすごい痛さです。ぴりぴりぴりぴりして、止めようと思った涙が、逆にあとからあとから湧いてきます。泣いちゃだめだと思ったのに、涙は全然止まりません。
 痛くって、情けなくって、こわくって、とうとうまことくんは、本当に泣いてしまいました。
 「わぁーん……」
 「ほらっ、まこと、こすっちゃダメだっ。もっと痛くなるからっ。ほら、こっちむいて」
 かずやくんは、手桶にきれいな水を一杯にはって、やさしく、そうっと、まことくんのあわだらけの顔を洗ってあげました。
 ゆぶねであたたまったかずやくんのあたたかいゆびさきが、やさしくまことくんの目や鼻やほっぺたを撫でて、あわを洗い流してくれました。そのやさしさに、余計になみだがあふれでてしまう、まことくんなのでした。
 かずやくんは、ゆぶねのあたたかいお湯をくんで、まことくんのからだのあわも洗い流してあげました。まだ洗っていないせなかと、ひだりのうでをやさしく洗ってあげました。全身のあわをきれいに洗い流してあげて、
 「…おいで」
 と、まことくんをゆぶねの中に入れてあげました。
 まことくんはまだ少し泣いていました。
 かずやくんはどうしたら良いか分からなくて、でも、なんとか泣き止ませてあげたくて、でも、ずっとがまんしていたらしいまことくんの涙をみんな流させてあげたくて、何も声をかけてあげることが出来ませんでした。
 どうにかしてあげたくて、でも、どうしたら良いかわからなくて。
 だから、しっかりとまことくんをだきしめました。
 からだ全部がみっちゃくするように、ぎゅうっと、この世の全部からまことくんを守ってあげるような気持ちで、まことくんをだきしめてあげました。
 気が付けば、まことくんのはだかのからだをだきしめるのは初めてです。
 まことくんは、かずやくんよりもちいさくて、だきしめるとまことくんのあたまのてっぺんに、自分の鼻がくっつきます。
 まことくんのかみのけは、ももしゃんぷーの良いにおいがしました。
 いとおしいきもちでかずやくんは、胸が詰まって、息が出来なくなりかけてしまいました。
 かずやくんはこんな時、こいびとってどんな言葉をかけてあげれば良いんだろうって、必死で考えました。必死で考えて、考えて。
 「……よしよし」
 結局、見付けられないかずやくんでした。
 でも、かずやくんの精一杯のきもちは、まことくんに伝わったようでした。
 かずやくんにからだを預けていたまことくんが、おずおずと、かずやくんの背中に両手をのばします。それから、きゅう…と、だきついてきました。
 「……ごめんね。かずやくん……たのしい旅行なのに、泣いちゃってごめんね……」
 かずやくんの耳もとで、小さな声で言いました。
 「気にするなよ……」
 大人の会話はまだまだしらない2人です。でも、本当の愛は、ちょっぴり分かる2人でした。
 かずやくんのうでの中で、ようやく落ち着いたまことくんは、もも園で聞いた声の話をかずやくんにしました。
 「…ほんとうにね、僕が思ったことじゃないんだよ。だって、あの時僕、本当にまだお腹すいてなかったんだもん。…空耳じゃないよ。うそでもない。本当に、ほんとうに聞こえたんだ」
 「うん。信じるよ」
 「……ホントに?」
 「うん」
 「ありがとう…。ねえ、かずやくんはあの声、だれが言ったんだと思う?」
 「うーん……誰だろう……」
 「……もしかして……おばけかなぁ……」
 「かもしれないな……でも、まこと大丈夫だよ。オレがいるから大丈夫」
 こわがるまことくんにかずやくんはきっぱりと言いました。
 「おばけでも大丈夫。オレが絶対守ってやるからこわくないぞ」
 男らしくて、格好良くて、頼もしいなと、まことくんは思いました。
 「……うんっ」
 おばけはこわくてしかたありませんが、かずやくんと一緒だったら、大丈夫かなって、思うまことくんでした。
 かずやくんは本当にたのもしい恋人です。
 まことくんは、
(かずやくんにだったら、本当になんでもあげたい)
 って、思うくらい、かずやくんに愛を感じました。
 でも、『あいしているよ』って、言うのがどうしてもはずかしくて言えないまことくんでした。
 せめて気持ちだけでも伝えたくて、まことくんは、
 「……すき」
 って、言いながら、かずやくんのほっぺたにキスをしました。
 それから、まことくんの方をむいたかずやくんのくちにもキスをしました。
 「…だいすき」
 まことくんのせいいっぱいのあいじょうひょうげんでした。
 いつもより少しだいたんでせっきょくてきなまことくんの行動に、どきまぎしてしまうかずやくんでした。
 「…あ、あついからもうそろそろでようか」
 自分が、りーどしなくちゃと、内心あせるかずやくんでした。
 「あれ?かずやくんはからだとあたま、洗ってないよ」
 「あ、いけねっ」
 それからかずやくんは、おふろばで生まれてはじめてのことを2つしました。
 1つは、ものすごい早さでからだを洗ったこと。
 もう1つは、ゆぶねに1人きりになってしまって、またこわくなってしまったまことくんのために、
 「ずっと、見ててやるから大丈夫」
 というやくそくを守るために、かおをあげたままあたまを洗ったことです。
 しゃんぷーが目に入ってとても痛かったですが、がんばって、かずやくんは絶対にまことくんから目をはなしたりはしませんでした。
 2人のあたまからは、おんなじしゃんぷーのにおいがします。
 「ぼくたちまるでももみたいだね」
 って、まことくんが言ったので、
 「うん、そうだな」
 と、かずやくんは返しました。
 すっかりあたたまって、ぽかぽかの2人は、ほっぺたもほんのりももいろで、ほんとうにもものように見えました。

 「………………」
 まことくんとかずやくんがお風呂に入っているころ。
 おばけは軽トラックの荷台でくんくんとにおいを嗅いでいました。
 ももしゃんぷーの良いにおいがします。
 「……やっぱりあの子はももなんだぁー……」
 おばけはぽつりとうれしそうにつぶやきました。
 もも園で、自分の声を聞き取った男の子。
 おばけは、とてもびっくりしました。
 自分の声を聞けた人なんて、もう何百年も会っていなかったからです。
 生まれた時から一緒にいたかずやくんのおじいさんですら、おばけの声はきこえなかったのです。
 おばけは、自分の声を聞き取った男の子のことがとても気になりました。
 かりすまもも職人のおじいさんの手で頭を撫でられたら、ももの気分になってしまった男の子が、とてもとても気になりました。
 おばけが食べたいももは、まだまだ青くて固いこどもの実です。
 こんや1晩くらいなら、見張ってなくても食べごろにはならないだろうとおばけは思いました。
 すごいももからはなれるのは、すこしちゅうちょしてしまったおばけですが、それでもはなれて、その男の子と一緒に軽トラックの荷台にのってしまうほど、おばけは男の子のことが気になってしかたがありませんでした。だって、人間なのに、ももの心になってしまう男の子です。すごいももを探して探して3000年。いろんなももにであったおばけですが、人間なのにもものような男の子なんてはじめてです。きょうみしんしんになってしまってもしかたのないことだったのです。
 (もしかしたら、もも人間かもしれないぞー。……食ったらきっとうまいだろうなぁ−)
 おばけはおそろしいことを考えていたのでした。
 (もも大好き−vv)
 おばけはももが大好物なのです。
 おふろばのまどからあたたかな湯気がもくもくしていました。
 その湯気は、おばけが大好きなもものにおいがしていました。
 おばけは荷台の上からじーっと、おぶろばをのぞいていました。
 「だいすき」
 あの、男の子の声がしました。
 「……うへへ……」
 おばけはおおきなくちから滝のようなよだれを流してご機嫌でした。
 (すごいももも良いけれど、あのももも欲しいのだ)
 荷台のふちにかけた手をにぎにぎしながら、おばけはずーっとながめていました。
 おなかはぐーぐーなっていました。
 

 おばけはきおくを大事にします。
 しぬと未来がなくなるからです。
 夢がなくなってしまうから、持っていたものすべてがたからものになります。
 きおくがとってもたいせつだから、きおくにすがってこのよに残り続けます。
 おばけの世界は決してかなしいだけじゃないけれど、生きている人にとっては、かなしいところかもしれません。
 おばけは、にんぎょさんとの愛だけがすべてです。
 生まれかわってまんいち忘れてしまうなら、おばけのままでも良いのです。
 もしかしたら、そんなきもちは、おんねんとよばれてしまうのかもしれません。
 でも、おばけはそれでも良いと思っています。
 えいえんのおばけでも良い。にんぎょさんのことを忘れてしまうのはいや。
 じょうぶつなんて出来なくても良い。
 おばけは、ずっとにんぎょさんのそばにいたいのです。
 すごいももを食べれば、えいえんの命が手に入ります。
 おばけはもう、いのちなんてありません。
 だから、きっとすごいももを食べたら、えいえんのおばけになるのでしょう。
 でも、そうなるのが、このおばけにとってのしあわせなのです。
 そうすれば、愛するにんぎょさんのやくそくを本当に守れることが出来るのですから。
 ……でも、それは、とてもゆがんでしまった愛のかたちなのかもしれません…。
 おばけもそれは分かっていました。
 それでも、愛だけは貫き通したいおばけでした。
 ずっとずっと、ただそれだけを願い続けて。
 おばけはやがて、ほんとうのおばけになってしまっていました。
 おそろしいことでも、なんでもない、ふつうの気持ちで考えられるようになってしまっていたのです。

 「…………」
 「…………」
 かずやくんのおばあさんは、まことくんとかずやくんのふとんをぴったりくっつけて敷いてくれていました。
 「おふろは気持ちよかったかい?」
 かずやくんのおばあちゃんは、ニコニコとやさしいえがおで聞いてきます。
 「う、うんっ。ちょうど良い湯加減だったよ。ありがとう。ばあちゃん」
 かずやくんの声は、心なしかうわずっています。
 「まことくんは?よーくあったまったかい?」
 「は、はいっ」
 まことくんなんか、かちかちにきんちょうしていました。
 「おやおや…どうしたんだい、2人とも」
 おばさんは、わらいながら聞きました。
 「んーん。なんでもないよ。おやすみっ、ばあちゃん」
 やっぱり、すこしうわずった声でかずやくんは言いました。
 「はい。おやすみ。ああ、ねぇ、かずや。おじいちゃん、明日ももも園に連れていくってがんばってるけれど、どうする?」
 「ま、まことはどうしたい?」
 「あ、ああ……ぼく、いきたいな…」
 「ばあちゃん、じいちゃんに行くって言ってもらっても良い?」
 「いいよ。よかったぁ。おじいちゃん喜ぶよ。……さ、じゃあ、ゆっくりおやすみ。まことくん」
 「は、はいっっ」
 「さみしくないかい?」
 「は、はいっっ」
 まことくんはカチカチです。だけれども、がんばって言葉をつづけました。
 「かずやくんと一緒だから、さみしくないですっ。」
 そして、きんちょうしながらも、かずやくんのおばあさんにニコッと笑ってみせました。
 「おやすみなさい」
 「はい。おやすみ。なにかあったら、いつでも呼んでちょうだいね」
 かずやくんのおばあさんは、まことくんとかずやくんが、おとうさんとおかあさんのいないところで眠れるかどうか心配だったようでした。
 それで、緊張しているのかと思いました。
 しんぱいそうにまことくんのあたまを撫でています。
 かずやくんのおばあさんの手は、おじいさんとはちがったやさしさを持った手でした。
 まことくんは、なんだか自分があかちゃんだったころを思い出しました。
 安心出来るあたたかな手でした。かずやくんとも違った……そう、まことくんのおかあさんと一番似ている撫でかたでした。
 よい子な気分になれる撫でかたでした。
 まことくんは、ちょっとだけ緊張がとけました。
 だから、
 「……本当に大丈夫だよ。かずやくんと一緒だから」
 と、いつもの声で言えました。柔らかな、かわいらしいまことくんらしい声です。
 その顔を見て、かずやくんのおばあさんはやっと安心出来ました。
 「おやすみね…かずや、ちゃんとまことくんのめんどうを見てやるんだよ」
 「うん。オレ、ちゃんとめんどうみてやるよ」
 「かずやくんっ」
 まことくんは、ちょっとはずかしくなってしまいました。
 「めんどう見るって…ぼく、かずやくんと同い年なんだからねっ」
 ぷうっ、と、ふくれてみたものの、とてもうれしいまことくんでした。
 「じゃあ、本当におやすみなさいね」
 『おやすみなさーい』
 2人は声をそろえておやすみなさいを言いました。
 さて、とうとう2人っきりの夜がやってきました。
 2人とも、おとうさんとおかあさんがいなくてさみしいなんて思っている場合じゃありません。
 こんな広いお部屋の中で、2人は2人っきりで夜を過ごすのです。
 疲れたしおなかもいっぱいなので、本当はとても眠たいのです。
 でも、眠るなんて、とってももったいないのです!!
 ぴったり並んだ2組の布団。
 なんだかまるで夫婦みたいです。
 「………なんだか…しんこん旅行みたいだね……」
 小さな声でまことくんが言いました。
 「…うん。しんこん旅行みたいだ……」
 かずやくんは言いました。
 しんこん旅行の夜って、何をすれば良いのかしらべておけば良かったと思う2人なのでした。
 「…………もう……ねよっか」
 まことくんは困ったようにもじもじしながらそう言いました。
 「………うん」
 かずやくんも困ったように返事をしました。
 「まことはどっちでねたい?」
 「……どっちでも良いよ。かずやくんは?」
 その時、かずやくんはとても良いことをひらめきました。
 「まことと同じ布団が良い」
 「…………え…」
 かずやくんは、真っ赤になっているまことくんを真直ぐみつめてもう一度言いました。
 「同じ布団で、一緒に寝よう」
 まことくんは、もう、耳まで真っ赤になってものすごくもじもじして、でも、そうっと両手でかずやくんの手をとりながら言いました。
 「………うん」
 右がわの布団にしました。でんきをけして、2人は布団にもぐり込みました。
 大人ようの布団だから、2人でもじゅうぶんなおおきさです。
 「ほら、もっとこっちにきな」
 かずやくんはまことくんをだきよせて、うでまくらをしてあげました。
 すぐそばにまことくんのかわいらしい顔があります。月明かりに照らされて、いっそうかわいらしく見えました。
 かずやくんは、不思議な感覚におちいりました。
 なんでしょう……からだじゅうの血がざわざわとわきたつようなかんじです。
 まことくんを抱き締める…くらいではすまないような…キスだけでは足りないような……もっと…一緒になりたい……ひとつになりたい…そんな感覚です。
 むちゃくちゃにしたくないのに、むちゃくちゃにしてしまいたいような、そんな不思議な感覚でした。
 たいせつなまことくんをむちゃくちゃにする訳にはいきません。
 もてあましそうになってしまう、生まれてはじめてのこんとろーる出来なくなりそうな感覚をむりやり押さえて、かずやくんは、しずかに、でも、じょうねつてきに、まことくんにキスをしました。
 いつもよりずっとずっとながいキスです。
 あたまがくらくらしそうなキスでした。
 いつもとちがうキスに、まことくんはびっくりして、それからすこしこわがりました。
 だけど、まことくんはそのキスをすべてうけとめました。
 あたまがぼうっ…と、するような、すてきなくちづけでした。
 むいしきに、お互いのくちびるを吸ってしまうようなキスでした。
 はぁ…はぁ…はぁ…
 息苦しくなって、くちびるをはなして、2人はかけっこのあとのような呼吸をしました。
 むねがぎゅーっと痛くなるような甘い気持ちになりました。
 「かずやくん…」
 まことくんは、思わずかずやくんの名前を呼んでしまいました。
 なにか言わなくては自分が自分でなくなってしまうような気がしたからです。
 かずやくんのくちびるは、少しぬれていました。
 まことくんはそのくちびるをそうっとさわりました。
 かずやくんは、だまってくちびるをさわらせてくれました。
 やわらかくてうすくて、甘いくちびるです。
 まことくんは、甘い気持ちできぜつしそうになりました。
 きぜつしてしまわないように、だいすきなかずやくんをみつめ続けていました。
 月のあかりがかずやくんのかおを照らし出します。
 きれいだな…と、思いました。
 格好良いなって、いつも思っているかずやくんって、きれいでもあるんだなぁって少し感動してしまいました。
 すぐそばにあるかずやくんのかおをまことくんはじっとみつめていました。
 かずやくんも、間近にあるまことくんをみつめていました。
 かずやくんはずっと言いたくて、でも、言えなかった言葉を言おうと思いました。
 その言葉はかずやくんははずかしくてなかなか言えなかった言葉でした。
 どれくらいみつめあっていたでしょうか。
 かずやくんは、ぽつりと、でも、はっきりとその言葉をまことくんに言いました。
 「………あいしてる」
 まるで、かみなりに打たれたみたいに。
 まことくんは、全身をふるわせると、ちからいっぱいかずやくんにだきつきました。
 そして、かずやくん耳もとで、ちいさなちいさな…とても小さな声で言いました。
 「………ぼ…ぼくも……………あいしてる………」
 かずやくんは、無言でまことくんを抱き締めました。

 そのまま2人は甘いねむりにつきました。
 ももしゃんぷーのにおいに包まれながら。


 

 

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3000HITありがとうございます。ここにアクセスしてくれた全ての皆様へ。

おはなしは4へつづきます。もはやssではなくなってきた感が・・・。

おたのしみにっvv