<<< 3000HIT御礼ss
>>>
「すごいもも」
4
かずやくんのうでの中でしあわせな気分でねむっていたまことくんは、ま夜中になって、ふと、目がさめてしまいました。すぐ目の前には、すやすやとねむっているかずやくんの顔があります。
「…………」
いつもはとても格好良いかずやくんですが、目をとじてねむっている顔は、とてもきれいに見えました。まつげがとても長くて、まるでお姫様みたいです。
(…かずやくん)
まことくんは、心のなかでこっそりとかずやくんを呼びました。
どんな小さな声でも、まことくんの声だったら、きっとかずやくんは目をさましてしまいます。まことくんは、もう少しだけお姫様みたいにきれいなかずやくんの寝顔を見ていたかったのです。
かずやくんは、すやすやとねむっています。目をさましそうな気配はありません。
(…かずやくん…)
まことくんは、もう一度心の中でこっそりとかずやくんの名前を呼びました。かずやくんは目をさましません。まことくんは、なんだかひみつのことをしているような気分なって、とても嬉しくなりました。
とても近くから、かずやくんの寝顔をながめます。
浅黒くてつるつるの肌。真っ黒で細くてやわらかな髪。おでこの汗を吸い取って、前髪は少し束になったようにくっついています。きりりっとしたまゆげ。一番だいすきなかずやくんの目は、いまはしずかに閉じています。まことくんは、かずやくんのまつげが本当はとても長かったことに、初めてきがつきました。ちっちゃくて、でも、とっても整った鼻。まことくんより少しだけうすい唇。いろはおんなじ、ももいろです。ちょっと口を開いています。覗くと、まっしろな歯がならんでいるのが見えました。
「ん………」
かずやくんが小さな声を出しました。
まことくんは、口からしんぞうが飛び出しそうになるかと思うくらいびっくりしました。あわてて目を閉じて、ねむったフリをしました。しんぞうはビックリして、ドキドキしています。ぴったりとからだをくっつけてねむっていたので、しんぞうの音でかずやくんの目がさめてしまうのではないかと、まことくんは思いました。
(どうしよう、どうしよう)
まことくんはぎゅーっと目をつぶりました。
(こっそりねがおを見てたのバレちゃうっ)
大好きなかずやくんのうでの中なのに、にげだしてしまいたいまことくんでした。
でも、かずやくんは、目をさましませんでした。
1ぷんたって、2ふんたって、3ぷんたって、ようやくまことくんはそうっ…と、目を開けました。
かずやくんは、ぐっすりとねむったままです。
(よかったぁ…………)
まことくんは、思わずためいきをつきました。
それからまた、まことくんはしばらくかずやくんの寝顔をみつめていました。
きれいだな…。きれいだな…。
ほかにどんなけいようしがあるのか分からないまことくんは、こころの中でなんどもなんども、きれいだなって、つぶやきました。
(いつか、ぼくはこの人とけっこんするんだなぁ…。うれしいな………)
うっとりと、まことくんは思いました。
(……キスしちゃおうかな……)
うっとりの延長上で、まことくんはそう思いました。
ねむっているかずやくんにキスをするのは初めてです。
そう思ったら、どうしようもないほど、ときめいてしまうまことくんでした。
まことくんは意を決しました。
(よしっ、かずやくんっ、ぼくキスするよっ)
まことくんは、かずやくんにもっと近付きました。
くちびるの場所を定めて、目を閉じました。
(かずやくん……)
まさにくちびるが重なろうとした瞬間、まことくんは気がつきました。
(あっ、いけないっ!!…ねむっているかずやくんって、まるでお姫様みたいにきれいだから、もしかしたらねむっている時だけは本当のお姫様なのかもしれない。……どうしよう。そしたらぼくはいまだけかずやくんの王子様なんだ。……たしか、王子様のキスで目をさましちゃうお姫様っていたっけ。かずやくんがそのお姫様だったら大変だっ。ぼくのキスで目をさましちゃうよっ)
間一髪、まことくんはキスを思いとどまりました。
(ふぅ……あぶない、あぶない)
夜中に目がさめて、じつは自分も少し寝ぼけているのに気付いていないまことくんでした。
(もう少しでかずやくんを起こしちゃうところだった。気をつけなくっちゃ…)
それでもかずやくんにどうしてもキスがしたいとまことくんは思いました。
ねむい頭でいっしょうけんめい考えて、ぱじゃまのえりもとから見える、かずやくんの鎖骨にキスをすることにしました。
もう一度、しずかにしずかにかずやくんににじりよって…………まことくんはかずやくんの鎖骨に、そっとキスをしました。
(かずやくん………)
むねがあまい気持ちで一杯になってしまうくらい気持ちの良いキスが出来ました。
キスって、ほっぺたとくちびるいがいにも、気持ち良いところってあるんだなぁと、まことくんは思いました。
(…今度、かずやくんにおしえてあげようっと…)
ちょっと、得意な気分になったまことくんでした。
(………もう、ねようっと)
まんぞくしたまことくんは、またねむくなってきました。
ちいさなあくびをすると、こころもちかずやくんに寄り添ってまことくんは目をとじました。
「…ん……まこ……と……」
とてもねむそうな声でかずやくんが言いました。
今度こそおこしてしまったかと、まことくんは思いましたが、かずやくんはそう言って、無意識のまま、まことくんをしっかりとだきしめたまま、また規則正しい寝息をたてはじめました。
(…もう…っ…びっくりするじやないかぁ……かずやくんっ……)
そう思いながらも、ねむっていても自分のことを抱き寄せてくれたかずやくんの行動がうれしいまことくんでした。
(……おやすみvvかずやくん…)
心の中でもう一度おやすみなさいを言ったあと、まことくんはねむりにつこうとしました。
でも、そのとき、まことくんはとても小さな知らない声をきいてしまったのです。
「………おばけちゃん……おばけちゃん……どこ?」
おばあさんの声ではありません。もも園で聞いた、おなかをすかせた誰かの声でもありません。初めて聞く、とってもかなしそうな、かぼそい女の人の声でした。
「っっっっ!!!!」
まことくんは、もう、しんぞうが止まってしまいそうなくらいびっくりしました。
思わず力いっぱいかずやくんに抱きついてしまいました。
「ん…どうした?」
かずやくんは、すぐに目をさましてくれました。
「どうした?まこと?」
ねむそうな声でしたが、自分にしがみついて震えているまことくんにやさしく声をかけました。
「か…か、かずやくん……っ……だれか……いる……っっ」
「だれ?」
「わ…わからない」
かずやくんは、おびえているまことくんを包み込むように抱きしめて言いました。
「まこと。だいじょうぶだよ。オレがいるから。教えて。どこにだれがいる?」
まことくんの顔は、かずやくんのむねに、ぎゅうっと押し付けられています。ももしゃんぷーとももせっけんのにおいにまざって、かずやくんのにおいがします。
まことくんは、おおきくいきを吸って、かずやくんのにおいをかぎました。
少しだけ、あんしんしました。本当は、こわくて声なんて出せるような状態ではありませんでしたが、必死で声を出しました。
「……い…いり…入り口の…ふすまのところ……」
声のした方をまことくんは教えます。
かずやくんは、まことくんをだきしめたまま、へやの入り口のふすまの方を見ました。
すると………
そこには、全然しらないおんなの人が立って、顔を半分だけ覗かせて、こっちを見ているではありませんか!!
見たこともない、知らないおんなの人です。きれいだけれど、とても悲しそうな顔をしているおんなの人です。
さすがにかずやくんもびっくりしてしまいました。
だって、こんな時間に他人の家にいる知らない人って言ったら、どろぼうか、おばけのどっちかしかありません。かぼそいおんなのどろぼうなんて聞いたことありません。そしたら、もう、おばけとしか考えられないのです。かずやくんはおばけに会うのは生まれてはじめてです。こわくないなんてこと、決して、決してなかったのです。
でも、かずやくんのうでの中には、おびえきってふるえているまことくんがいます。
かずやくんはおふろばでのやくそくがあります。
「おばけでも大丈夫。オレが絶対守ってやるからこわくないぞ」
かずやくんは、おんなの人の足を見ました。
そこには、あるべきはずの足はなく、かわりにきれいなももいろのウロコにおおわれた、しなやかなさかなの下半分がついていたのです。
(うわっ!!)
かずやくんは、もう、本当にびっくりしました。
でも、かずやくんには守らなければならない愛しいまことくんがいるのです。
かずやくんは、ゆうきをふりしぼって、おふとんから飛び出し、まことくんを背中に隠して、ごーるきーぱーのように両手を左右にいっぱいにのばしました。
「きみはだれだっ!!」
かずやくんのりりしい声がへやじゅうにひびきました。
まことくんは、きょうふの中、うす目を開いてかずやくんを見上げました。
かずやくんは、全身でまことくんを守っています。
ねむっていた時のお姫様みたいなかずやくんではありませんでした。
こわいものから守ってくれる王子様のようでした。
ほんとうに、ほんとうに格好良いと思いました。
でも、かずやくんのからだが、本当にちょっとではありましたが、ふるえているのにまことくんは、気がつきました。
(ああ…っ。かずやくんだってきっとおばけがこわいんだ。なのに、かずやくんは、こうやってぼくをおばけから守ってくれている……っっ)
(ありがとうっ…かずやくんっ……)
(……でも……かずやくんは一体誰が守ってあげるの?)
いろんなことが頭の中をぐるぐるとかけめぐり、さいごにまことくんは、たいせつでだいすきなかずやくんの身を案じました。
まことくんだって男の子です。
たいせつでだいすきなかずやくんが、自分を守ってもしもしんでしまったら、まことくんだっていきてはいられません。
かずやくんは……ぼくが守るっ!!
まことくんは、とつぜんゆうきがわいてきました。
おなかのそこから沸き上がってくるようなゆうきでした。
まことくんはおふとんから飛び出し、かずやくんの前に飛び出しました。
「まことっ!!」
とっさにかばおうとしたかずやくんをはねのけて、まことくんは、両手をいっぱいにひろげて言いました。
「か、かずやくんは、ぼ、ぼ…ぼくのたいせつな…っ…ひとだっ!!て、て、て、…てなんか出したらこここ、このぼく、がっ……しょうちしないからぁっ!!」
半分なみだ声のぶるぶるふるえた声でした。
まことくんは、だれかを守ってあげるなんて、生まれてはじめてのこういです。
どう守って良いのかさえも分かりません。
でも、自分のすべてをなげだしても、かずやくんを守ってあげなくちゃと思う心がこんな行動にまことくんをかりたてたのでした。
「…まこと…っ」
かずやくんはかんむりょうです。
でも、まことくんはここまでが限界でした。
「う……うわぁぁぁぁんんっ!!!!」
あまりのこわさに泣き出してしまったのでした。
「ま、まことっ」
「おばけこわい〜っっ!!!」
「まことっ、ほらっ!!こっちに来いっ!!」
かずやくんは、あわててまことくんを自分の後ろに座らせました。
「ここから前に出ちゃダメだぞっ」
まことくんに言い聞かせると、かずやくんはあらためて、おんなの人に言いました。
「きみはだれだっ!!まことをこわがらせちゃダメだよっ!!」
すると、おんなの人は、
「………ごめんなさい」
と、ひょうしぬけしてしまうくらい、あっさりとあやまってきたのです。
「いや……そんな、いいよ。分かってくれれば」
かずやくんとしてもどうして良いのか分からず、なんだか場にそぐわない返事をしてしまいました。一気にせんいそうしつです。良く見れば、おんなのひとは、ぜんぜんこわがらせようとしている顔をしていません。ただ、かなしそうにこちらをみつめているだけです。
いくらしらないおんなのひとでも、かなしそうなおんなの人をじゃけんには出来ないのがかずやくんの良いところです。思わずかずやくんは、おんなの人に声をかけてしまいました。
「…立ち話もなんだから……こっちにおいでよ」
「か、かずやくんっ」
「だいじょうぶだよ。この人、わるい人じゃなさそうだから」
「……でも……」
「だいじょうぶだよ。オレがいるから」
「………」
「……な」
「……うん…」
「さ、入って」
「………おじゃまします……」
おんなの人は、もうしわけなさそうにかずやくんとまことくんがねていた部屋に入ってきたのでした。
「夜分おそくにごめんなさい。あたし、おばけちゃんをさがしにきたものです…」
おんなの人は、2組みあったふとんの、使っていなかった方にきようにさかなの下半身をせいざするみたいに折り曲げてすわると、もうしわけなさそうに話し始めました。
「………あたしは、なんぜんねんも生きつづけているにんぎょです。もう、ずっとながいこと1人っきりです。でも、あたし…3000ねんぐらいまえにすてきな彼氏にやっと出会えたんです。すごくやさしい人でした。いつもニコニコしていて、あたしのことをとっても愛してくれていました。ずっと一緒にいようねっ…て、やくそくしたのに、あの人ったらひどいんですよ。うっかりしんじゃったんです。とらふぐのたべすぎです。
……あの人…おばけになってもあたしに会いに来てくれたんです。『ごめんね』って言いに来てくれたんです。……『絶対じょうぶつしません』って言ってくれたんです。……でも、あのときのあたしはかたくなだったの………」
「その人の名前は?」
かずやくんの質問に、にんぎょさんはこまったように笑みを浮かべて言いました。
「…あのね……あたし、うっかり名前を聞くのを忘れていたの……だから、今はおばけちゃんって…」
「あ…、だから、さっき『おばけちゃん』って言ってたの?」
「ええ。そう。あたしね、命がえいえんなものだから、知り合いのいきものって、たいていがみんなしんじゃって、じょうぶつ出来ていないおともだちがとっても多いの。そのおともだちに聞いたんだけど、にんげんって、しんでこの世に残っているとおばけって言われるんだって?だから、ひとまず仮の名前って言うことで、おばけにしてみたの。でもね、呼び捨てじゃかわいそうだから、あたし、おばけちゃんって呼んでるの」
「うん。おばけちゃんっていうの、とっても良いとおもうよ。だって、すこしこわくなくなるもん」
「あら、あなた良いこといってくれるのね…ねぇ、あなたのお名前、なんていうの?」
「えっと……ぼくは、まことです」
「まことちゃん?まことくん?」
「……えと…『くん』が良いかな…」
「じゃ、まことくんね。あなたは?」
「オレはかずや」
「あなたはとっても格好良いわ。あなたも『くん』?」
「うん。オレもそっちが良い。君は?」
「……あたしは……名前がないの」
「どうして?」
まことくんは、ビックリして聞きました。
「おとうさんとおかあさんから名前、つけてもらってないの?」
「……うみの世界は基本的に名前がないの……だって、あんまり意味がないから」
「どうして?」
まことくんは言いました。
「この世の中にいるんだから、ちゃんと名前は持っていた方が良いよ。だって、あなたを呼ぶ時、ぼく達とってもこまるもの」
にんぎょさんは、すこしうれしそうなおかをしました。
「…そんなこと言ってくれたのってまことくんが初めてよ」
「だって、名前は大切だよ」
「そうだよ。オレもそう思う。ねぇ、いまここで名前つけようよ」
「うんそうだよ。そうしようよ」
にんぎょさんは、とてもとてもうれしそうに笑いました。笑ってからにんぎょさんはきがつきました。
「あたし……わらったのって……3000年ぶりだわ……」
にんぎょさんは、おばけと一緒だった時、自分がいつでも笑っていたのを思い出しました。やさしくって、おもしろかったおばけ。とてもとても会いたくなりました。
「どうしたの?」
まことくんが、なみだを零しそうになっているにんぎょさんにそっと聞きました。
「………あたし……おばけちゃんにあいたい………」
そう言うと、にんぎょさんは、ぽろぽろとなみだを流して泣いてしまいました。
ぽろぽろと落ちるなみだは、たたみの上で、きれいな真珠になりました。
まことくんもかずやくんもそれにはとてもおどろきましたが、あえて何も言いませんでした。
「よしよし……」
まことくんは、かずやくんにそうしてもらったのを思い出しながらにんぎょさんの背中をなでてあげました。かずやくんも、
「いいよ。泣きたいだけなきな…」
って、言いながらやさしくにんぎょさんの背中をなでてあげました。
にんぎょさんはすっきりするまで泣きました。
「…ありがとう」
まるでつきものが落ちたみたいなすっきりとした表情でした。
「そう…あの人ったら、おっちょこちょいなんだもの。あたしがしっかりしなくちゃ、会えるものも会えないわ」
力強い、前向きな発言でした。
それから、三人で話し合って、にんぎょさんの名前を決めました。
「ぼくね、にんぎょさんのそのウロコ、とってもきれいだと思うんだ。とってもきれいなももいろだから、ぼく、ももちゃんが良いと思うんだ」
いろんな名前がこうほに上がったあとに、まことくんがそう言いました。
「……うん。そうだな。それが良いよ。にんぎょさんは?」
「………ええ。とても良い名前。それがあたしの名前になるんだったらあたしとってもうれしい」
「じゃ、決定だな」
かずやくんが言いました。
「じゃあ……あたし……これから、ももちゃんって、呼んで下さい」
はずかしそうにテレながら、にんぎょさん……いいえ、ももちゃんは言いました。
おふろあがりのまことくんとかずやくんも、もものようでしたが、顔を赤らめて、うれしそうに笑う、ももいろのウロコのにんぎょさんは、かずやくんより、まことくんより、ちょっとだけ、もっと『もも』らしく見えました。
「ねぇ、ももちゃん、どうしておばけちゃんをさがしにここまできたの?」
まことくんが、一番聞きたいことをももちゃんに聞きました。
「……あのね、あたし色んなところをさがしていた時に『すごいもも』のお話を耳にしたの」
『すごいももっ!?』
2人は声をそろえて言いました。
「すごいももって、オレのおじちいゃんのもも園にあるもものこと?」
「ええ」
ももちゃんは大きく頷きました。
「あのね、『西王母のもも』っていう、伝説のすごいももが人間界に一つだけ実ったって今霊界ではわだいふっとう中なの。その実を食べると永遠の命が手に入るってうわさでね。あたし、多分おばけちゃん、そのももを欲しがってるんじゃないかって思って。で、さがしてさがして、ここのおじいさまが作ったももがそのすごいももだったつきとめたの。ここで待っていたら、おばけちゃんに会えるんじゃないかって思って」
「…………あっ!!!」
まことくんは、思い出して、思わず大きな声を出してしまいました。
「どうした?まこと」
「か、かずやくんっ、ほら、あのもも園でぼくが聞いた声っ!!」
「……あっ!!そうかっ。そうかもっ」
「あの声、やっぱりおばけだったんだっ!!」
「まことくんっ、おばけちゃんにあったの?!」
ももちゃんは、思わず身を乗り出して聞きました。
「うん。…でも、ももちゃんのさがしているおばけじゃなかったらごめんね。でもね、すごいもものそばで『早くたべたいなぁ…』って、言ってたんだよっ」
まことくんも思わずこうふんして言いました。もう、こわかったことなんて、すっかりわすれてしまっています。
「会いたい。会いたいっ!!ねぇっ、まことくんっっ、お願いっ!!あたしをそのもも園につれてってっ!!!」
ももちゃんのひっしさが伝わります。でも、今は、おばけがげんきなうしみつどきです。もしもほかのおばけにもあったらどうしようと、まことくんは、すこしおじけづいてしまいました。
「……どうしよう、かずやくん」
まことくんは、こまって、かずやくんにたずねました。
「ねぇ、ももちゃん、あさになったらオレ達もう1回もも園に行くんだ。その時に一緒に行こうよ」
かずやくんがやさしく声をかけましたが、今、ももちゃんは、おばけに会いたい気持ちでむねが張り裂けそうになってしまっていたのです。
「今すぐあいたいっ。ねぇ、かずやくんっ、まことくんっ、あたしを今直ぐそこにつれてって。ねぇっ、おねがいっっ……!!」
かずやくんは、思いました。
もしもまことくんと3000年も別れ離れになってしまったら……
まことくんは、考えました。
もしもかずやくんと3000年も別れ離れになってしまったら……
そんなの絶対にたえられないっ!!!!
「ね、かずやくんっ」
「…んっ」
愛しい人に会いに行くのなら、きっと、おばけがでちゃうかもしれないくらくてこわい闇の中でも、おそれず走っていけるのだから。
『いこうっ!!』
かずやくんとまことくんは同時にさけぶと、ももちゃんにむかって手を差し伸べました。
『いこう、すごいもものあるもも園へっ!!!』
まるで2人とも、勇敢な王子様のようでした。
「……ありがとう」
ももちゃんが、2人に両手を差し伸べたその時でした。
「きゃぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」
お勝手の方で、かずやくんのおばあさんのぬのを切り裂くような悲鳴があがったのですっ!!!
『おばあちゃんっ!!!』
かずやくんとまことくんは叫びました。
「ももちゃん、まこと、すぐ戻るからっ。ここで待っててっ!!!」
かずやくんは、お勝手にむかってものすごいスピードで走り出しました。
「わあっ!!!」
お勝手で、かずやくんの悲鳴が聞こえますっ!!
「か、かずやくんっ!!!」
まことくんが泣きそうな声でかずやくんの名前を呼びました。
「……ど、どうしようっ……ももちゃん」
ももちゃんは、ききりとした表情で言いました。
「行きましょう。なにがあったか分からないけれど、もも園はこの窮地を脱してからでもおそくないわっ」
「……うんっ」
まことくんとももちゃんもお勝手にむかって走り出しました。
「っっ!!!!!!」
お勝手には………!!!
つづく 3へもどる TOPへ 5へ
|